「巨人の肩」から降りて得たもの。外部の立場で生み出すシナジー
梶川:完全に外に出たことで、大企業との関係性はどう変わりましたか?
小笠原:経営チーム3人で自己資本を出して立ち上げた会社ですが、外に出たことで、逆にリコージャパンなどの販売会社と一緒に仕事がしやすくなりました。ここが非常におもしろいポイントです。外部ベンダーの立ち位置になることで、研修会社やディストリビューターとも自由にアライアンスを組むことができるようになりました。“巨人の肩”から一度降りたことで、かえって大企業のアセットを使い倒す良いシナジーが生まれています。
梶川:現在の状況はいかがですか?
小笠原:今が一番おもしろいフェーズです。私は人事畑の出身でも組織開発のプロフェッショナルでもありませんでしたが、試行錯誤の末に、研修とAIツールのパッケージ商材が一番反応が良いことがわかり、ここ1年でようやくマーケットに強くフィットしてきました。売上も徐々についてきており、途中で補正を入れた事業計画の数字からも大きくずれることなく、順調に成長軌道を描いています。

「知るとやるは別世界」新規事業を志す人に贈る、一次情報の価値
梶川:今までのキャリアを振り返って、今の起業に至るターニングポイントはなんだったと感じますか。
小笠原:一番大きかったのは、新入社員時代に有志の活動などでネットワークを広げたことと、2012年頃にリコーの若手メンバーでカリフォルニアのUCバークレーへ行く機会をもらったことです。当時、日立からいらっしゃって理事を務められていた井村亮さんが引率してくださり、現地の起業家の方々とラウンドテーブルを組みました。当時は日本のハードウェア企業が凋落し、MBAのテキストにされるような時期で、向こうでいろいろな話を聞かされて少し反発心も抱いていたのですが、そのときに井村理事から「これでわかった気になるなよ。やると知るは全然別世界だからな」と釘を刺されたんです。その言葉が、今でも自分の中に深く刺さっています。
梶川:それが「一次情報」の重要性につながるのですね。
小笠原:はい。企画や決裁のポジションに就く前に、営業をやったり工場の製販管理をやったりして、現場でどういう人が働いているかを一次情報として知れたことが非常に大きかったです。新規事業も同じで、実際に自分で小さな雪だるまを作って触ってみないとわからないことが山ほどあります。それを知らないままポジションだけが上がって大きな権限をもらっても、実態がともなわず一番つらい思いをするのは自分自身です。だからこそ、生っぽい体験を取りに行って足腰を鍛えることが重要なのだと思います。
梶川:最後に、大企業の中で新規事業に取り組む読者に向けてアドバイスをお願いします。
小笠原:「機会があるなら、少し心が動いたときに1回乗って触ってみたほうがお得だよ」ということです。大企業の最大の強みは、その場をずっと持てる資本体力があることです。1回そのネットワークに飛び込めば、今までにないつながりが広がり、結果的に会社全体も絶対に良くなっていきます。もし今、新規事業に興味を持ってBiz/Zineを読んでいるような状態なら、社内政治や失敗を恐れてあれこれ悩むより、さっさと動いてしまったほうが絶対に早いと思います。
梶川:大企業の新規事業における葛藤と可能性を、内と外の両面から経験された小笠原さんならではの、非常にリアルで熱量のあるお話でした。本日はありがとうございました。



