研究者から新規事業リーダーへ。帝人100周年事業での抜擢
Biz/Zine編集部・梶川(以下、梶川):山名さん、本日はよろしくお願いします。山名さんは帝人で研究者としてキャリアをスタートさせ、新規事業立ち上げを経て、現在はNOMON & Co.、明治ホールディングス、ASAGI Labsと3つの組織で多彩なキャリアを歩まれています。まずは、これまでのキャリアの変遷からお伺いできますか。
山名慶氏(以下、山名):少し遡りますが、大学は信州大学の繊維学部で生化学を専攻しました。卒業後はバレーボールを続けたくて筑波大学の体育専門学群に入り直したのですが、そこで「スポーツや食で人を健康にする」方向へシフトし、同大学院で分子生物学、遺伝医学などを学びました。その後、帝人に入社し、薬の基礎研究から安全性の確認まで20年ほど携わりました。その間、ハーバード大学の医学部に留学したり、帝人ファーマで研究主幹という特別なポジションを務めたりしていました。
梶川:研究者として着実に実績を重ねられていたわけですね。そこから、どのように新規事業に関わるようになったのでしょうか。
山名:実は2008年のハーバード留学時代から、「病気になってから薬で治すよりも、その前の予防や日常のケアをする必要があるのに、事業化されていない」という問題意識を抱えていました。そんな中、2018年に帝人が創業100周年を迎えるにあたり、未来の事業を構想するプロジェクトが発足したんです。そこで当時の社長から突然「新しい事業を取り仕切れ」と指名されました。研究者だった私がヘルスケア事業の事業統括補佐となり、「人の老化を制御して、病気にならない世界をつくる」というビジョンを掲げて、社内ベンチャーとしてNOMON(ノモン)を立ち上げることになりました。
未開拓市場での黒字化達成、親会社の決断による突然の終幕
梶川:ご自身がNOMONの社長に就任され、BtoCのECビジネスという帝人としても異例の挑戦が始まりました。
山名:「お前が言い出したのだからやれ」と言われ、2019年2月に会社を立ち上げました。当時はまだNMN(抗老化候補物質)を扱う会社は世界でもごく僅かで、前例のない市場でした。エビデンスに基づいた正しい情報を届けるため、代理店を通さず自社ECで販売し、ブランド名も「帝人」の冠を外してゼロからブランディングを行いました。最初はサプリメント1月分で15万円(1カプセル5,000円)という高価格からのスタートで、怪しまれたり、コロナ禍で海外注文が止まったりと苦労の連続でしたね。
梶川:大企業の中での立ち上げや、価格設定・普及の面でもご苦労があったのではないでしょうか。
山名:大企業は投資という概念が薄く、「3年で黒字化しろ」と求められます。使えるお金も人も少ない中で、パートナー企業との連携や生産体制の強化を進め、最終的には1個5万8,000円まで価格を落として普及を図り、なんとか黒字化・海外展開が見えるところまで持っていきました。しかし、親会社である帝人が事業整理を行う中で、食領域全体からの撤退を決定し、事業の終了が言い渡されたのです。



