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注目の経営書の著者と語る

なぜ「ゆるキャラ」はイノベーションなのか──変化の予兆を捉え、行動変容を促す『概念シフト』を語る

ゲスト:一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科 准教授 永山晋氏

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「能動的推論」をきっかけとした対話が生んだフレームワーク

栗原:本書に結実した理論は、経営学のみならず心理学、社会学、さらには神経科学や哲学的対話まで非常に多層的な学術的知見が注ぎ込まれていると感じます。この知見はどのようにして形成されたのでしょうか。

永山:もともと私自身が、領域横断的に様々な知見を組み合わせることが好きという背景がありますが、転機となったのは予防医学研究者の石川善樹さんやCOTENの深井龍之介さんらとの勉強会で「能動的推論(Active Inference)」に出会ったことです。

 これは、人間を含む生物の知覚、行動、学習を統一的に説明しようとする理論的枠組みです。ただ、数式も含めて深く理解するのはとても難しく、コロナ禍の間、石川善樹さんたちと関連する論文や書籍を読み解いていきました。この分野を専門とする友人の研究者であるライアン・スミスさんを訪ねて、アメリカの脳科学研究所にも1ヵ月滞在し、直接教えてもらいました。

 また、能動的推論と概念シフトを結びつけようと模索する中で、コルクの佐渡島庸平さん、ライターの代麻理子さん、学びデザインの荒木博行さん、狂言師で俳優の石田淡朗さんらとの定期雑談会でも、概念や概念シフトをテーマに議論を重ねてきました。こうした学びと対話を通じて、本書のアイデアを発展させていきました。

栗原:学術的な厳密さと、実務家が使えるフレームワークとしての分かりやすさが両立している理由は、そうした対話のプロセスがあったからなのですね。

永山:ダイヤモンド社から『ハーバード・ビジネス・レビュー』で「概念シフト」をテーマにした執筆依頼をいただいたのが2021年でした。そこから長期間にわたる試行錯誤を経てようやく一冊の書籍にまとめることができました。

栗原:領域横断的な対話と雑談を通じて、長い時間をかけて練り上げられた作品なのですね。では最後に、生成AIの爆発的普及を含め、社会の前提が目まぐるしく変化する現代において、ビジネスパーソンはどのように「概念シフト」の視点と向き合うべきか、読者へのメッセージをお願いします。

永山:今、AIの進化などをきっかけに、「人間とは何か」、「資本主義とは何か」といったような、自分たちはどのような前提で世界を捉えているかを問い直すメタ認知的な視点が強く求められているようにも思います。

 「人間」まで対象を大きくせずとも、私たちが日々の業務や生活で「当たり前」だと信じ込んでいる概念や業界構造、社会制度の中には、意外と最近成立したものだったりするので、今のあり方を、これからも変わらない前提だと考える必要はありません。

 そこでまず大切になるのは、「この概念はなぜ成立し、何によって支えられているのか」と、その成り立ちや構造を問い直すことだと思います。みんな知っているのに、その成立背景を知らないとしたら、調べてみる価値があります。『概念シフト』ではこうした事例をフレームワークと絡めながら多数紹介しています。

 利益や成果、課題解決だけにとらわれず、それまでになかったものの見方や行動の可能性を生み出す。そんな挑戦をするビジネスパーソンが増えていくことを期待しています。

栗原:本日は大変刺激的で深いお話をありがとうございました。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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