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戦略投資とファイナンス

事業ポートフォリオの最適化-経営を全体最適する方法

第7回

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最適なポートフォリオは
「効率フロンティア・グラフ」で探す

 「効率フロンティア・グラフ」は、最適なポートフォリオの探索シミュレーションに有効なツールです。戦略投資の数が少なければ上記のように計算できますが、組み合わせの数が膨大になりますと人力では難しくなります。図1は、Y軸を投資の価値、X軸を投資額とした効率フロンティア・グラフです。価値および投資額のそれぞれに「しきい値」が設定されており、グラフ上の小さな丸印はすべてしきい値の範囲に収まるポートフォリオ案です。ポートフォリオ案のうち、投資額当たりの価値が一番大きい案を結んだ青い線を「効率フロンティア」と呼びます。

効率フロンティア・グラフ図1:効率フロンティア・グラフ

 図1で、オレンジ色の破線で囲んだ点を、オリジナルの計画に基づくポートフォリオとします。ここを起点にして、オリジナルのポートフォリオと同じ価値を得られれば良いとすると、効率フロンティア(紫色の線)上のポートフォリオ案Aの方がずっと少ない投資で済むため、より効率の良いポートフォリオ案であると言えます。

 一方、オリジナルのポートフォリオと同じ額を投資するのであれば、ポートフォリオ案Bの方が高い価値を得られるので、一層効率の良いポートフォリオであることが分かります。さらに、効率フロンティア上のポートフォリオ案Cは、ポートフォリオ案Bよりも少ない投資でより高い価値を得られます。ポートフォリオ案Cは、考えられる案のなかで、最も高い価値の得られるポートフォリオ案です。このように、効率フロンティア・グラフを利用すると、リターンを最大化させ、投資額を最小化させる、すなわち、生産性が最も高いポートフォリオ案を容易に探し出せるようになります。

 いかがでしたでしょうか。複数の戦略投資に対して、最適な経営資源配分を行う手法をご紹介しました。この手法は、全体の投資生産性を高めることが特徴ですが、予算枠の変更などによって戦略投資を中止しなくて良い方法を模索する点も重要です。

 大きな投資案が却下されるということは、事業の現場に大きな影響を及ぼすことがあります。たとえば、ある技術やアイデアを研究開発し、ようやく事業化に踏み切ろうかという段階に至っていたとします。その技術やアイデアに直接携わっていたメンバーにしてみれば、これから努力が実ろうかというときに、投資案が却下されれば行き場を失ってしまいかねません。可能であれば、新しい事業の種は枯らさずに、育てたいものです。

 このような最適化の検討が行われる前提として、計画案が信頼に足る精度を持っている必要があります。前回までの連載の内容は、計画案の精度を高め、その内容や前提を適切に事業現場と経営陣が共有することに役立ちます。最適化手法だけでなく、分析・シミュレーション手法をあわせて活用し、戦略投資の成功に役立てていただきたいと思います。

  1. 籠屋邦夫、「選択と集中の意思決定」東洋経済新報社 2000年

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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