将来を予測するのではなく、将来に対する洞察を得る
「シナリオプランニング」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。これは、将来起こりえる環境変化に対するシナリオを複数用意し、各々のシナリオへの対応を考察する手法です。シナリオプランニングには、いくつかの特徴があります。
第1に、シナリオプランニングは単一の未来を予測するのではなく、不確実性を前提とした起こる可能性のある複数の未来に対する洞察を得ることを目的とします。これは、先見(フォーサイト)という言葉で表されます。第2に、未来のある時点で大きな変化が起きると仮定し、その変化に備えるためにバックキャスティングというアプローチを採用します。バックキャスティングの反対の概念はフォアキャスティングであり、天気予報がその典型です。第3に、その言葉とは裏腹に、シナリオプランニングは計画というよりも行動に焦点を当てるものです。
シナリオプランニングのプロセスは複雑なものから比較的簡単なものまでありますが、ここでは1~2日程度で実施できる手順をご紹介していきましょう。
テーマとタイムフレームを決める
シナリオプランニングは、新規事業の企画や開発以外にも様々な目的に使われます。最初に行うべきことは、テーマ(大きな質問)を決めることです。また、タイムフレーム(時間枠)も定めておく必要があります。ビジョンを持っている企業であれば、それに合わせることもよいアイディアかと思います。テーマと時間枠が決まれば、「2025年の私たちのビジネスモデルはどのようなものだろうか?どのような価値提案を提供すべきであろうか?」といったシンプルなステートメントができあがります。
ドライビングフォースを洗い出す
ドライビングフォースとは、将来に大きな変化をもたらす可能性を持つ外部環境要因です。一般的には、前回ご紹介したPESTLE(政治、経済、社会、技術、法律、環境)またはそれに準ずるマクロ外部要因が用いられます。マクロ外部要因は、単独の企業が直接的には統制することが不可能なものであり、それゆえにシナリオを準備する必要があるのです。
不確実性とインパクトのマトリクスを生成する
ドライビングフォースを洗い出したら、各々を不確実性という視点、次にインパクトという視点より評点(5段階または10段階)を付けていき、マトリクス上にプロットしていきます(図1)。不確実性とはその変化が起こる方向性が現時点では分からないことであり、インパクトとはその変化が自社のビジネスモデルに大きな影響を与えることを指すものです。
不確実性とインパクトのマトリクスは、4つの象限から構成されます。第1象限は、不確実性とインパクトが高く、インパクトも大きいドライビングフォースであり、シナリオプランニングで取り扱う領域です。第2象限は、不確実性が低くてインパクトが大きいものですので、現在のビジネスモデルにて考慮すべきです。第3および第4の象限は、継続して監視すべきものです。