米国、中国、ASEANでの事業を成長戦略のコアに
ハウス食品グループの事業ポートフォリオは、大きく香辛調味加工食品事業、健康食品事業、海外事業の3つに大別されている。その中でコア事業は、「バーモントカレー」、「ジャワカレー」などのブランドに代表される香辛調味加工食品だ。ただ、少子高齢化などにより国内市場の伸びに限界が見える中、成長戦略の中核を担うコア育成事業として位置づけられているのが海外事業だ。
ハウス食品グループの海外事業への注力が加速したのは2012年4月スタートの第4次中期計画からで、それは2015年からの第5次中期計画でも引き継がれている。目指す姿は「ハウスが育んできた食のおいしさを世界に広げる」というものだ。 広浦康勝氏が国際事業の担当となったのは注力開始の2012年からで、以前は国内マーケティングの責任者を務めていた。トップから示された目標は2020年の海外比率を売上高20%、利益30%にするというものだ。その時点でグループの売上高が3,000億円だとすれば、売上高600億円、ROS15%ということになる。 具体的には14あるSBU(戦略的事業単位)で行うことになるのだが、目標達成のために三つのエリアと四つの事業に集中している。
これまでの実績だが、海外注力がスタートする直前の2011年度に約110億円だったのが、2014年度には約247億円と倍以上に伸びている。2016年度には300億円規模になる見通しだ。エリア別で最多は米国だが、広浦氏は「米国ではヘルシーフードとして豆腐が人気ですが、欧米では食がどんどん外部化し、需要分化も進んでいますので、日本での事業をそのまま水平展開するのは難しい」と見ている。一方中国とASEANでの中心ニーズは、子供の成長や家庭の幸せなどにあり、カレーなど日本におけるビジネスモデルが十分に応用できると見ている。特に近年、日式(日本式)カレー事業が着実に伸びているのが中国だ。
中国カレー展開のための市場戦略とは
ハウス食品が中国で最初にカレー事業を展開したのは1997年で、レストランと輸出を行った。そのとき、「カレーの味覚はNOではない」という受け入れの手応えを得ることができた。 2001年からはレトルトカレーの現地生産を開始するため、現地法人を立ち上げた。このとき、法治よりも人治の傾向が強い中国の役所から許認可を受けることの難しさや、現地独特の小売りの事情(消費者だけでなく、売り手からも利益を得る意向が強い)などについて学ぶことになる。そして2005年から本丸の家庭用のルーを展開することにし、上海に工場を建ててチャレンジしてきた。2012年度には、単年の黒字化を達成している。
ハウス食品が現地展開する際の考え方について広浦氏は「日本の技術なり、ブランドで参入し、シェアを取る。というものではありません」と語る。あくまで「新しい市場を創造するというスタンス」で、海外に参入していく。その一番のメリットは、価格競争にならない点だ。言い換えれば、市場価格を自らリードすることができる。さらに先行者メリットを受ける。「このスタンスでないと、海外で売上は出せるが、利益を上げるのは難しいのではないかと考えています」(広浦氏)。
2014年には中国事業統括会社「好待食品((中国)投資有限公司」を樹立している。その下に各機能会社が所属するという体制だ。中国の場合、事業に色々な法律が絡んでくるので、しっかり対応できる組織を作り上げないと難しい。たとえば上海と大連に工場があるのだが、この統制法人がなかったら、二つの工場からでるバーモントカレーは、別々のEANコード(日本のJANコードに相当)を付けなければならない。資本金はハウス食品グループ本社が99億円なのに対し、50億円だ。「ハウス食品グループとして、中国事業を一つの柱にしていくのだという、不退転の覚悟でこの会社を設立しました」(広浦氏)。