アクセンチュアが自動車/産業機器メーカーのAI・ロボット技術への戦略を調査

製造業の多くはAIへの投資強化の意向を持つがデジタル技術の最大活用への準備ができていない

 アクセンチュアは、自動車メーカーと産業機器メーカーの多くは自社の生産性向上の取り組みの一環として、AI(Artificial Intelligence:人工知能)や関連する機器等に投資する計画がある一方で、投資効果を得るために必要な対策を実施できていないことが判明したとする最新の調査結果を発表した。(画像は、「協調型ロボットは生産性向上のための最適なテクノロジー~採用しているテクノロジー/デバイスのトップ5~」、作成:アクセンチュア)

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[著] BizZine編集部

[タグ] 製造 AI・機械学習 ロボット

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 アクセンチュアの調査レポート「Machine dreams: Making the Most of the Connected Industrial Workforce」は、アジア、欧州、米国の企業でコネクテッド・インダストリアル・ワークフォース(人間と機械を連携させた製造体制)の戦略策定に携わる500人以上の上級役職者を対象に行ったインタビュー調査をもとにまとめられたもの。

メーカーはコネクテッド・インダストリアル・ワークフォースのインパクトを確信

 このレポートでは、人間の作業員が機械やAIと緊密に統合・連携するコネクテッド・インダストリアル・ワークフォースの進化過程において、製造や生産の現場では急速な変化が起こっていると指摘している。さまざまなモバイル端末や安全技術、追跡技術などをアナリティクスと組み合わせることで、企業は労働力の強化を図ろうとしている。

 自動車メーカーや産業機器メーカーの大半(94%)が、コネクテッド・インダストリアル・ワークフォースの形成を自社のビジネス戦略の一環と捉えていることが分かった。

 全調査対象者の回答を平均すると、今後5年間でのコネクテッド・インダストリアル・ワークフォース関連技術への投資は、最大で自社の研究開発費の4分の1を占める可能性があることを示唆している。その額は自動車業界では1,810億ユーロ、産業機器業界では390億ユーロに達するという。

 メーカー各社は、コネクテッド・インダストリアル・ワークフォースがもたらすインパクトの大きさを確信している。しかし、こうした投資によって実現すべきビジネスの競争優位の確立といった本来の価値を享受できない恐れがあることも明らかになった。

 例えば、「コネクテッド・インダストリアル・ワークフォースによって得られる潜在的な価値を引き出すための対策を実行している」と答えた回答者は、全体の4分の1以下(22%)に留まっており、85%の回答者が「自社はデジタル領域におけるリーダー企業ではなく、後発企業である」と考えている。

 コネクテッド・インダストリアル・ワークフォースの価値を最大化するための課題の1つに、関連テクノロジーがある。回答者の76%は、データの脆弱性によるリスクを「中~高レベル」と見ており、72%はシステムの複雑さやシステム関連の脆弱性によるリスクを「中~高レベル」と見ている。

 さらに、3分の2以上(70%)の回答者が「スキルを持った従業員の不足が『中~高レベル』のリスクになり得る」と考えており、こうした人材に関する課題もコネクテッド・インダストリアル・ワークフォースの戦略の成功可否を左右する可能性があることを示唆している。

製造分野のテクノロジーは人間が主体から、人間と機械の両方が主体のものに進化

 アクセンチュアのインダストリアル部門におけるグローバル統括で、シニア・マネジング・ディレクターのエリック・シェイファー氏は次のように述べている。

 「デジタル技術に投資して競争優位性を高めている先進的な製造事業者は、デジタル領域における後発企業に比べて、2倍近い資金をコネクテッド・インダストリアル・ワークフォースの分野に投じています。今後5年間でその額はさらに上昇し続けるでしょう。後発企業はコネクテッド・インダストリアル・ワークフォースを実現するためのテクノロジーを実装していくことに関して確信を持っておらず、これはビジネスの競争優位性を脅かす要因にもなり得るのです」

 協調型のマシンや人間の能力を増強するマシン、自律型マシンなどを最適統合することによって、より効果的なワークフォースを創出することが期待される中、この調査における回答者の大多数(85%)は、「製造分野におけるテクノロジーは、人間が主体のものから、人間と機械の両方が主体のものに進化する」と考えている。

 今回の調査対象のうち、多数の企業では労働力強化のための投資に注力し始めている。こうした企業では、工場や倉庫で資材を運搬するモバイルロボットの無人搬送機等に対してすでに多くの予算を投じており、今後も継続的に投資を行うことが見込まれる。

 また、こうした企業では、人間との協調型ロボット(cobot)だけではなく、同時にスマートグラスやスマートヘルメットといった拡張現実(AR)デバイスへの投資も、今後5年間で増加させていく計画がある。

 セキュリティへの懸念に関しては、多数の回答者が「コネクテッド・ワークフォースにおけるセキュリティを確保するために既存のIT基盤のアップグレードに向けた投資を行っている」と答えている。また、「コネクテッド・インダストリアル・ワーカーの構築にいち早く取り組んでいる」と答えた回答者のうち89%が、「スキル不足を補うための新たな人材の採用活動をすでに開始している」と答えている。

自動車業界がコネクテッド・インダストリアル・ワークフォースを牽引する

 アクセンチュアでは、年商500億ユーロの自動車メーカーが、コネクテッド・インダストリアル・ワークフォースを構築することで2020年までに最大5億ユーロの追加収益が上積みされると推定している。

 この追加収益には、研究開発によって採算性が向上して生まれる5,000万ユーロ、製造・供給面の採算性向上による4億1,500万ユーロ、アフターセールスによる利益の拡大から生まれる3,000万ユーロが含まれている。

 生産性向上のためにテクノロジーを活用しようとしている企業のうち、自動車メーカーと自動車サプライヤーが、協調型ロボットと無人搬送車、ARデバイスに最も高い関心を示した。前出のシェイファー氏は、「より専門的な作業に協調型ロボットが用いられるようになる中、デジタル領域への投資によって競争力を高めようとする先進的なメーカーでは、人間と機械を連携させた製造体制に急速に移行しています」と述べている。

 このレポートでは、コネクテッド・ワークフォース・テクノロジーへの妥当な研究開発投資額について、国によって違いが見られる点も明らかにしている。米国では、コネクテッド・インダストリアル・ワークフォースに対する投資を研究開発費の40%と想定しており、調査対象となった国のうち、最も高くなっている。

 次いで高いのが中国で、研究開発費の23%がこの分野に向けられると予測している。一方、日本ではその割合は17%程度に留まっており、ドイツとフランスはそれぞれ、20%と19%となっている。