公私のお金を混ぜるな、小さな不正が「蟻の一穴」に
事業活動をする上で、出張経費の申請および精算は避けられない作業の一つ。しかしながら、頻繁になれば、チケットを手配し、領収書を集め、用紙やパソコンに打ち込むのも面倒なもの。つい、いい加減になってしまうという人も少なくない。さらに、その作業にかかる手間や時間は、事業部門の社員に加え、決済を管理する総務部、支払いを担当する経理部にとっても大きな負担となっている。そして、それ以上に課題視されているのがコンプライアンスへの影響だ。
「たとえば、『空出張』による出張費の不正受給、用途不明の交際費など、一見小さな事象に見えるものの、公共性の高い事業者にとって信用を地に落とす致命的な問題となりかねません。都知事の政治資金不正使用疑惑や市議会議員の空出張などもあいまって、世の中の目は厳しくなり、小さな不正が大打撃となる可能性が高くなってきました。まさに“蟻の一穴”を見落とさないリスク管理が不可欠になっているのです」(鈴木孝輔氏)
その対応策として、鈴木氏は「公私のお金をできるだけ混ぜないこと」が大事だという。中でも効果的なのは「個人の立て替えを減らすこと」。つまり個人が手にする会社のお金を減らすことというわけだ。そのためには、チケット手配の際にコーポレートカードを用いて決済を行ったり、電子マネーを活用したり、「いつどこで誰が何を購入したか」記録を残すことが大切だという。
「立て替えは10%未満に留めることをお勧めしています。企業が直接支払う形にして、たとえば航空チケットも搭乗時、つまり“発生主義”で請求が立てば、空出張はおろか価格の適正さも吟味することができます。さらに何か問題があれば、データを検証することもできます。当然、いざという時だけでなく、『見られる可能性がある』ということは不正の抑止力にもなります」(鈴木氏)
しかしながら、海外に比べて日本はデータ連携が行いにくいという事情がある。航空会社も鉄道も交通系はシステムがバラバラで、対応スキームが個別で異なる。何社とシームレスに連携できるかは、経費管理システム選びの大きなポイントと言えるだろう。
「突き合わせ」は大きな負担、発注データを引用せよ
なお経費管理システムに対する期待度は、コンプライアンスを強く意識する企業ほど高くなる。というのも、上長や総務・経理部門が厳しくチェックしており、厳しくすればするほどコストも手間も増える一方。その最たる業務が「突き合わせ」であり、効率化が課題となっているのだ。
「数十万単位で伝票が発生する企業では、アルバイトを十数名雇って突き合わせをするところもあります。しかし、極めるほど手間もコストもかかるが“絶対”はない。どこで線引きをするのか、悩ましい問題です」(鈴木氏)
こうした「突き合わせ」の負担を軽減するためには、やはり“発生主義”のシステムが有効だという。費用が発生した「発生源=利用者」が、発注先からのデータを引用して入力する。その時点で突き合わせが完了するというわけだ。その間に不正が入り込む余地はなく、入力者も領収書を保管したり、費用を覚えておいたりという負担が軽減する。
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