日本経済の閉塞感を打破するイノベーションは“社外での挑戦”から生まれる
ここ1、2年の間に、企業や組織の垣根を越えて働こうという動きが活発化している。ロート製薬の副業解禁やYahoo!の週休3日制などがその最たる例だ。優れた手腕を持った経営者たちが、これまでタブー視されてきた社外活動を後押しする方向に舵を切ったのはなぜだろう。早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏によると、経営学的な答えは至極明確なものだという。
それは、イノベーションの本質が「知と知の組み合わせ」だからです。これは、ジョセフ・シュンペーターが唱えた経済学のもっとも基本的な考え方のひとつです。人間はゼロからは何も生み出せません。自分のなかの既存知と既存知を組み合わせることで新しいアイデアを思いつくのです。
日本経済が非常に不安定で閉塞感にあふれている現在。多くの企業が、生き残っていくために、現状を打破するようなイノベーションを求めている。しかし入山氏は、日本経済の中核を担うような企業でも、従来の体質にとらわれていては、イノベーションを生み出すことはできない断言する。
人間の認知には限界があります。だからイノベーションのための知と知の組み合わせも、自分の見える範囲にある既存の知しか活用できていません。日本経済を支えてきた比較的長い歴史をもつ業界では、ほとんどの知の組み合わせは一通り試し終わっています。そのなかでイノベーションを起こすには、新しい知を探索することが必要です。
入山氏によると、探索して得られた新しい知を既存の知と組み合わせることによって、イノベーションを起こした例は多くある。たとえば、TOYOTAの生産システムは、大野耐一氏がアメリカのスーパーマーケットのモノや情報の流れを、自動車の生産工程に取り入れて確立したものであるし、TSUTAYAのレンタルビジネスは、増田宗昭氏が消費者金融のビジネスモデルに気づきを得て開始したものだ。
ほとんどすべてのイノベーションは知の探索から生まれます。自分の領域からなるべく離れたところにある新しい知を幅広く取り入れて、自分が持っている既存の知と組み合わせることが、イノベーションを起こす唯一の方法だと言っても過言ではありません。