調査対象企業のうち、3分の2(66%)が、「過去2年間における主なイノベーションは、単なる新製品の開発ではなく、優れた顧客体験や、顧客体験に関連した新しいビジネスモデルから生まれた」と回答している。
調査にあたり、アクセンチュアは、産業機器、消費財、消費者向けテクノロジー、自動車、ライフサイエンス・医薬品・バイオテクノロジー、ソフトウエア、企業向けIT、通信技術の8業界において、イノベーションや製品開発に対する先進的な取り組みが経済・財政面にもたらす影響を定量化した。これにより、それぞれの業界で、イノベーション力や製品開発力が収益や営業利益の増加と相関していることが分かっている。
リーダー企業は「注力分野」より「新規分野」でのイノベーションで差別化
企業は、製品だけでなく、あらゆる顧客接点に対してイノベーションをもたらすことで多大な恩恵を受けることができる。アクセンチュアでは、自動車業界の企業がこうしたイノベーションを実現することで、年間で最大10億ドルの収益増を見込めると試算している。また、消費者向けテクノジー業界では6億3,300万ドル、医療テクノロジー業界では5億8,100万ドル、産業機器業界では5億6,700万ドルの収益増が見込めると予測している。
今回の調査により、各業界のリーダー企業が重点を置いている領域がそれぞれ明らかになった。例えば、通信機器業界のリーダー企業は新規事業の育成や事業統合に注力している一方、産業機器業界のリーダー企業はイノベーション力と製品開発力の強化に重点を置いている。また、消費財業界では企業戦略と商品戦略に一貫性を持たせることを最優先としている。
リーダー企業は、「注力分野のイノベーション」よりも「新規分野でのイノベーション」で差別化している。ハードウエアを主力にしてきた企業は、デジタル技術の進展によって、産業基盤が根底から覆されようとしており、ソフトウエアや新たなコネクテッド・エクスペリエンス(あらゆるモノがインターネットに繋がることで生まれる体験)に主軸を置いた戦略へ移行しようとしている。
スポーツアパレル、従来型の玩具やゲームのほか、冷蔵庫などの耐久消費財といった業界では、顧客との双方向のコミュニケーションやパーソナライゼーション、製品機能を強化することで、製品のサービス化を図っている。こうした動きの先頭に立つ企業は、単に欲しい製品を顧客に尋ねるのではなく、これまで満たされなかった顧客ニーズを特定することで差別化を図っている。
業界を牽引する企業は「アーリー・イノベーター」か「バリュー・メーカー」
調査データに基づきアクセンチュアは、イノベーターを「アーリー・イノベーター(ゲームチェンジをもたらす新たなイノベーションでいち早く価値を生み出す企業)」「バリュー・メーカー(エコシステムを活用することで製品単体では実現できないイノベーションを創出する企業)」「マーケットシェア・プロテクター(製品・サービスの強化でマーケットシェアを堅守する企業)」「エフィシェント・エグゼキューター(プロセスの効率化や体系化、最適化を図る企業)」の4つに分類した。このうち、業界を牽引する企業は「アーリー・イノベーター」か「バリュー・メーカー」のいずれかに分類される。
アクセンチュアのインダストリアル部門をグローバルで統括する、シニア・マネジング・ディレクターのエリック・シェイファー氏は次のように述べている。
「アーリー・イノベーター、もしくはバリュー・メーカーに分類された先進的なイノベーターは、提供する成果やソリューション、体験を差別化するために、企業戦略としてイノベーション創出に取り組んでおり、結果的に競合企業の収益を上回っています。アーリー・イノベーターとバリュー・メーカーは、戦略的に顧客体験の差別化を図っているという特徴を共通して持っていますが、今回の調査では合わせて全体の20%に留まっており、大半の企業が残りの2つに分類されています。バリュー・メーカーは、製品やサービスを様々な価値提案の切り口の1つとして捉えており、プラットフォームやエコシステムを活用して顧客接点の強化を図っています」