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「水平型コラボレーション時代」のUX

なぜ業種の垣根を越えた「水平型コラボレーション」が、“UXを最大化”するのか?

「水平コラボレーション時代」のUX:第1回

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 『UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか』(以下、『UXの時代』)を発表して以来、講演・セミナーや仕事上お会いする方々から、様々な意見・質問を寄せられるようになった。頂いた声を踏まえながら、私が執筆中・執筆後に考えたこと、ビジネスとして展開していることなども交えて、この本の内容について語ってみたい。連載第1回は、『UXの時代』の序章・第1章の内容を踏まえながら、垂直統合と水平協働、UX(ユーザーエクスペリエンス)など、この本の基本的な考え方について解説する。

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ビジネスが「垂直型から水平型へ」移行している本当の意味

  書籍『UXの時代』を書こうと考えた理由はいろいろあるが、序章で紹介したように、最も大きいのは「産業や社会の構造的な変化」が始まっていると気づいたことだ。その変化をわかりやすく言うと、「産業主導からユーザー主権への変化」だ。

『UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか』『UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか』(松島聡・著 / 英治出版・刊)

 スマートフォンやPC、タブレットなどの端末が普及したおかげで、ユーザーはインターネットを通じて世界中の情報にアクセスし、ユーザー同士がコミュニケートできるようになった。多種多様なWebサービスが現れ、ものの売り買いやサービスの提供なども簡単にできるようになった。

 重要なのは、単にインターネットやEC(電子商取引)が普及したことではなく、ユーザーたちが大企業主導の産業に依存せず、独自に連携してやりたいことをやっていく活動であり、そのためにシェアリングなどでリソースを融通し合うタイプの活動が急速に広まりつつあることだ。

 これまで経済をリードしてきたのは、19世紀から20世紀にかけて欧米で生まれた「垂直統合型」の大企業だった。(欧米の「垂直統合型」とくらべて、日本では「垂直統制型」という特殊なかたちをとっているが、その点については『UXの時代』第1章P.19を参照してほしい)。このビジネスモデルは原料調達から開発、製造、輸送など事業に必要なあらゆる活動と必要なリソースを囲い込むことで、効率的に製品を量産し、市場に供給することを可能にした。その効率によってユーザーはよりよい製品をより安く買うことができた。

 しかし今、こうした大企業から一方的に提供される製品を買って所有することに、ユーザーは以前ほど魅力を感じなくなってきている。製品の性能や品質が落ちたわけではない。むしろ以前にも増して、激しい競争の中でハイスピードに性能や品質は向上しているし、多くの製品が買われている。しかし、既存の産業の成長率は鈍化、あるいは下降している。かわりに急成長しているのは、UberやAirbnbのように、ユーザーがお互いにモノを融通し合い、使いたいときだけ使うといった行動を支援するシェアリング・サービスなのだ。

「垂直統合型と水平分業型

 他にも消費者が自分でほしいものを考え、デザインし、造るという、いわゆるプロシューマーの行動も広がりを見せている。彼らは大企業が囲い込んできた開発・製造のプロセスを自分たちでまかなうため互いに協力する。自分たちがほしい部品を自分たちで探して組み立てたり、3Dプリンターを使って自ら造ったりする。

 『UXの時代』にはこうした現象についてもっと詳しく書いたが、一番重要なのは、既存の産業がこれを容認しようと無視しようと、ユーザーたちは勝手に協力し、自分たちのやりたいことをやっていき、その動きはますます急速に拡大していくと予測できることだ。彼らの活動は大企業の強みだった垂直型ビジネスモデルの外で、水平なコラボレーションとして展開される。彼らと関わりたければ、垂直型構造の外に出て、水平型コラボレーションを支援するようなビジネスモデルを新たに作るしかない

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既存の大企業も「水平コラボレーション型」への移行を始めている

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この記事の著者

松島 聡(マツシマ アキラ)

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