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「学びのイノベーション」EdTechは企業教育をどう変えるか?──デジハリ大学院 佐藤教授に聞く

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アダプティブ・ラーニングとは「学びの個別化」

株式会社ブイキューブ マーケティング本部 デジタルマーケティング マネージャー 浜野善輝氏

浜野:
学びの質の変化といえば、映像や音、テキストとの連携といった技術的な面と、どう見せるかというコンテンツ面を考慮する必要がありそうですね。

佐藤:
それはありますね。ただ、誰に何を見せて何の効果を得たいかという目的が定まらなければ、コンテンツの方向性も定まりません。たとえば、EdTechはディスレクシア(難読症)の人に学びやすい環境を提供するとされています。「どうやって学ぶのが得意か」という学習者の優位特性に基づいて、映像をどう使うのか、音はどうするか、テキストは入るべきか、キネスティックス(体感覚 kinesthetics)を用いるかなど、「学習者の得意な学びの方法」に応じて様々な手法やコンテンツが検討されるべきでしょう。

浜野:
なるほど、それぞれに学習者の状況や得意な学びの方法に合わせて、技術的な手法やコンテンツの内容も変わるというわけですね。加えて、新しいデジタルテクノロジーを活用した仕組みの可能性もありますね。

佐藤:
ええ、バーチャルリアリティなど、いよいよ実用化に向けた調整や表現の工夫などもなされていくと思いますし、クラウドファンディングを活用した先生向け少額資金調達などの手法も出てきました。いずれにせよ、どんなにデジタルテクノロジーが進んでも万人に効果的な方法はなく、「誰に向けた」という最適化は必須です。このような「自分に合う学び方」を分析、推薦することを「アダプティブ・ラーニング」といい、様々な研究が進んでいます。

こうした「学びの最適化」の中で、大きな要素の一つがアセスメント等による「学習レベルの把握」です。人間は「ストレッチゴール」と言われるような、ちょっと背伸びをすると到達できる目標を与えられた方が俄然モチベーションが上がるんですね。がんばって「できた!」という達成感が学びの促進に大きな刺激になるのです。一方、難易度が高すぎると意気消沈して諦めてしまいますし、簡単すぎると飽きてしまう。絶妙なさじ加減でクリアすべき「ストレッチゴール」を提供し続けるためには、その人の学習履歴をトラッキングしてレベルを把握することが必要です。これもアダプティブ・ラーニングが追求する可能性です。

企業の採用・研修・人事にもイノベーションが起きる

浜野:
学習レベルが把握できるとしたら、学習コンテンツを提供する人や学ぶ本人もそうですが、評価の仕組みも変わるでしょうし、企業の人事部門のように採用者についての学習レベルを知りたい人にとっても仕組みや考え方が変わりそうですね。

佐藤:
まさにその通りで、まだ提唱レベルではありますが、最先端の研究では学習履歴をブロックチェーンで保証しようという技術が登場しています。たとえばMOOCs では、単元を学んだ後に小さな修了書「ナノディグリ」が出るようになっており、履歴をブロックチェーンで改ざんできないようにして保証します。

これまで大学の修了証は絶大な力を持ち、難関大学のものほど就職や昇給に有利でした。そこで学校が「学位の発行元」であり、「信用を保証」してきたわけです。とはいえ、たとえばカンニングを学校が見落とす可能性も否めません。そこで、ビットコインで使われているブロックチェーン技術のような、ネットワーク分散型でリアルタイムに保証しようというわけです。そうなると、これまで学校が保証してきた卒業も、一発勝負での受験も必要なくなるかもしれませんね。

浜野:
このようにお伺いすると、当然ながら企業における学びや評価も大きく変わるであろうことが実感できますね。

佐藤:
それは間違いないでしょう。現在の日本では「企業研修」は対面型が殆どです。企業研修にもアダプティブ・ラーニングが導入され、進捗や学習成果が保証できるようになれば、自ら学ぶ人は自身のキャリアを自らの手で高めていくことができ、人材育成や配置、処遇にも反映できます。

浜野:
実はブイキューブでも、子会社であるシンガポール内でLMS(学習管理システム:Learning Management System)を展開しているWizlearn Technology社のプラットフォームに、同じく子会社ですが日本でLMSを展開しているiStudy 社のノウハウを追加し、日本版にカスタマイズした「V-CUBEラーニング」を企業向けEラーニングとして提供を開始しました。
そうした Eラーニングの仕組みを提供している我々からすると、これからはツールやサービスをうまく組み合わせることも重要になると思います。

佐藤:
そうですね。IoTデバイスやバーチャルリアリティといった技術や、「アダプティブ・ラーニング」へのAI活用など、これまでのEラーニングに留まらない様々な技術が生じてくると思います。かつてEラーニングシステム開発には膨大なコストが必要でしたが、今はコモディティ化されたテクノロジーの組み合わせでかなりの範囲を実現できます。オンライン動画を使った英会話スクールなどは良い例で、ゼロからシステム開発するより1~2桁も少ない予算でサービス提供できてるんじゃないですか。 そうなると、EdTech には教育の素人が参入して面白くなると思いますよ。教育の玄人は、どうしてもこれまでの成功体験から視点を変えることは難しいです。素人による崇高な失敗が山ほど生じ、その上にごくわずかな成功が残るというような、EdTechサービスのカンブリア期が到来するのではないかと楽しみにしています。

浜野:
我々も、ソリューションベンダーとして挑戦したいですし、プラットフォーマーとしては、その上でどのようなソリューションが登場するのか、たいへん期待しています。

佐藤:
想像以上にEdTechのソリューションのバリエーションは広がっており、それぞれ異なる効果を持っています。その中で何をどのように使うのかを判断するには、まず「どんな学習効果を高めたいのか」という学習コンセプトから考える必要があります。つまりEdTechで効果的な学びを実践するには、「誰が対象で、どんな行動変容を促すのか」を認識する「アセスメント」、それに対する課題設定から解決策を決める「処方箋作成」、そして効果がどうだったのかをトラッキングする「変容の足跡管理」の3ステップが必要になります。分業かもしれませんし、近い未来には三位一体でアテンドする「教育プロデューサー」なる職能が誕生するかもしれませんね。

浜野:
たとえば企業研修の動画配信もかつては KPIが閲覧回数(PV)でしたが、それでは教育の成果が測れません。となれば、動画を流すだけでなく、折をみてテストを入れてみたり、遠隔で先生と双方向でやりとりができるようにしたり、様々な工夫が必要になってくると思います。

ブイキューブの Web コミュニケーションのツールにも、企業だけでなく、大学や専門学校など様々な教育機関に使われています。
1:Nでのレクチャー方式もあれば、1:N だけど質問はタイムラインでという方法もありますし、N:N であれば学習者同士が学ぶソーシャルラーニングという形態も作れます。遠隔地の小学校同士でディスカッションすることもできるんですよ。

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「学びのプロデューサー」に必要なスキルとは?

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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