行動観察を人材育成に活用する2つの方法
こうした行動観察を人材育成に活かすために、越野氏は2つの方法をあげる。1つは行動観察の「調査結果」に基づくもの。そしてもう1つは行動観察の「実践」によるものである。
前者は、越野氏ら行動観察のプロが該当者の行動を観察し、その結果を元に分析・資料を作成。それをもとに対象者とともにワークショップで調査結果を共有し、施策についてディスカッションを行っていく。そして、個々の行動目標を設定し、現場で実践、その結果をもとにまたワークショップを行うというサイクルを回していく。
越野氏は「対象者にとって日常の現場での事実が対象になっているため、実感が伴う。それをもとに自ら考え、目標を設定するため、コミットメントも高い。そして、さらに現場で実践し、見直しを図ることができるため自立的に改善サイクルを確立できる」とその効果を力説する。
また、後者については、行動分析に関するレクチャーのあと、対象者とともに行動分析を実践する。その後は「調査結果」と同様、ワークショップと実践、自立的な改善サイクルへとつなげていく。対象者が自ら行動分析を実践することで、前者よりさらに「自分自身への行動観察」のスキルを取得することができるというわけだ。ここでそれぞれの事例について紹介しよう。
1:行動観察調査結果をもとにした人材育成事例
●目的:訪問作業を行う事業者のCS向上
●手法:優秀スタッフのノウハウを行動観察により抽出。その結果をもとにワークショップやロールプレイングなどを行う。さらに自らの「行動」に照らしあわせて自己診断を行い、目標設定を行った。
●受講者の声:
「自分の業務に沿った話でリアリティがあった」
「自分の周りにいる優秀スタッフの考え方が学べた」
「日々の動きについても思い返すことができ、役に立った」
●その他類似事例:
耐久消費財販売会社/対象者全体の営業成績が10%以上アップ
飲食チェーン/自らの努力目標に対し、1か月後に70%の従業員が向上
2:行動観察の実践による人材育成事例
●目的:アミューズメント店舗のCS向上、特に店長クラスの行動観察スキルの取得
●手法:優秀スタッフのノウハウを行動観察により抽出。その結果をもとにワークショップやロールプレイングなどを行う。さらに自らの「行動」に照らしあわせて自己診断を行い、目標設定を行った。
●結果:164のファインディング、32の優秀ポイント、74の利用者の気持ち仮説を抽出
●受講者の声
「普段当たり前に見ていたことが顧客満足のヒントにあふれていることに驚いた」
「ワークショップが苦しかった。その分、他店との交流も深まり、達成感があった」
●今後の取り組み
・各営業店舗に2名ずつ行動観察スキルを習得
・行動観察サークル結成
・接客マニュアルに事例集として追加し、研修結果に組み込む
●その他類似事例:
施設メンテナンス会社/現場管理者による多数の改善アイディアの抽出