「商品設計」と「消費者ニーズ」との“ズレを最小化”するための生活者の“モヤモヤ“の解決
ある日突然、上司に呼ばれ、「来期に仕掛ける新規事業のアイディアを練ってほしい」と言われた時、あなたなら何から始めるだろうか。あるいは、売れ方が鈍化した既存商品のリニューアルを図るも、「マーケット調査だけでは対策が見えてこない」といった悩みはないだろうか。
坂田氏が7年前に立ち上げた「Blabo!」は、まさにそんな商品開発の課題解決のために活用されている共創プラットフォームだ。「Blabo!」には2万3000人を超える生活者が会員として登録しており、企業から投げかけられる様々な「お題」に対し、自由に意見を交換し合う。「まるで企業の会議室の扉が開いていて、ユーザーが自由に出入りするような感覚で」生活者視点でのソリューション発見につながるサービスとして、小売業を中心に述べ200社以上が導入してきたという。
坂田氏は前職のユニリーバ・ジャパンでシャンプーの新商品開発に携わっていた経験から、“生活者と直接対話をしながら、潜在ニーズや本音を引き出す仕組み”の必要性を感じていた。
1年間に生まれる商品の6割が「棚落ち」すると言われている現状は、非常にもったいない。担当者は必死に考えて新商品開発をしているのに、なぜ消費者のニーズとズレてしまうのか。表面的な回答を探るだけの調査頼みではなく、誰が、何を、なぜ求めているのか。もっとリアルな生活者の本音をフラットに聞ける場を作りたかった。
坂田氏曰く、マーケティングの最大の目的は、商品設計と消費者ニーズとのズレを最小化すること。そのためには、「商品を出してから答え合わせをする」のではなく、「商品を出す前から、丁寧に声を聞く」プロセスが重要だという。
とはいえ、ストレートに「何が欲しいですか?」と聞いても、生活者の正確な本音=インサイトはなかなか探れない。キーワードは、「モヤモヤ」の解決だ。
例えば、ハウス食品が求めたのは、カレーと比較して売り上げが伸び悩んでいたシチュー商品に関するインサイト。「Blabo!」では「シチューにまつわるモヤモヤを大募集。どういうモヤモヤで、どうやったら解決できる?」というお題を提示した。結果、主婦会員から寄せられたのが「手間の割にはメインにならず、ご飯との相性もイマイチ」というモヤモヤだった。「子どもや自分は好きだけれど、ご飯のおかずとしてはパパには物足りない。だからと言って、もう1品を作るのは大変なので、消去法でカレーを選択することがある」という生活者の実情が見えてきた。
結果、誕生したのは、“ご飯にかけて食べるシチュー”というまったく新しいコンセプトの商品「シチューオンライス」。4ヶ月で400万個を売り上げるヒット商品となった。