顧客のジョブから考えるイノベーションの最終段階は「アイディア評価」──ジョブを統合しフィットを検証する

「顧客のジョブ」から考えるイノベーション:第7回

 前回(第6回)は、イノベーションプロセスの3つ目までのステージを解説してきました。前回「発見する」ステージでは、市場全体または各市場セグメントで充足されていないニーズ(または過剰に充足されているニーズ)を発見し、適切なプロダクト/サービス戦略の方向づけを決めるステップを取り扱いました。今回は、顧客のジョブを中心としたイノベーションプロセスの4つ目(最後)のステージ「創造する」を解説します。

[公開日]

[著] 白井 和康

[タグ] デザイン思考 ジョブ理論 顧客のジョブ 中核となる機能的なジョブ ジョブマッピング ジョブマップ

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複数存在する「顧客のジョブ」を統合し、プロダクト/サービスのアイディアを評価してテストする

 本連載では前回までの記事で、イノベーションプロセスの3つ目までのステージを解説してきました。市場全体または各市場セグメントで充足されていないニーズ(または過剰に充足されているニーズ)を発見し、適切なプロダクト/サービス戦略の方向づけを決める各プロセスを取り扱いました。

 今回からは、イノベーションプロセスの最後のステージ「創造する」に移ります(図1)。前ステージとの関係で言えば、「創造する」ステージでは、発見されたニーズを満たすことに役立つ具体的なプロダクト/サービスに関するいくつかの全体コンセプトや機能アイディアを創造します。次に、あらかじめ設定された基準に基づきそのコンセプトやアイディアを評価し、プロトタイプを生成し、最終的にテストを行っていきます。なお、プロトタイプ生成とテストは、デザイン思考のアプローチを取り入れていきます。

イノベーションプロセスの4つのステージ(図1)イノベーションプロセスの4つのステージ

 最初に、中核となる機能的ジョブ(例.転職を実現する、引越しを完遂する、日用品を購買する、富を蓄える)全体に対するプロダクト/サービス全体のコンセプトを作っていきます。このコンセプトは、「発見する」ステージにて方向づけされた「プロダクト/サービス戦略」から導かれます。例えば、顧客のジョブをより上手く成し遂げることに役立つプロダクト/サービスにするのか、または顧客のジョブをより簡便に成し遂げることに役立つプロダクト/サービスにするのか、などです。

 具体的には、「理解する」ステージにて生成した普遍的ジョブマップ(中核となる機能的ジョブ全体を成し遂げるために、顧客がしなければならないステップバイステップのプロセス)をもう一度取り出し、プロダクト/サービス全体のコンセプトを考えていきます(図2)。以下は、キーとなる質問とコンセプトのサンプルです。

普遍的なジョブマップ(図2)普遍的なジョブマップ

■質問例1:ジョブが履行される背景(状況やトリガー)を事前に知ることによって、それを役立てることはできないだろうか?

●コンセプトのサンプル1:米国のホテルチェーンは、フライトが欠航し、空港にいる旅行者がスマートフォンで臨時宿泊先を探している際に、トップにメッセージ表示されるよう工夫しています。

■質問例2:ジョブ全体の履行スピードを高速化することはできないだろうか?

●コンセプトのサンプル2:アマゾンは、欲しい商品の調査、支払い手段の準備、配送先の確認、注文、配送状況の監視という一連のジョブステップを高速化/簡素化しています。

■質問例3:複数のジョブステップを1つにまとめてあげたり、特定のジョブステップを無くしてあげたりすることはできないだろうか?

●コンセプトのサンプル3:需要予測/センシング技術を使うことにより、在庫確認と補充すべきアイテムの自動発注を同時に行うソリューションを提供しているソフトウェアが存在します。

■質問例4:現在使用している複数のプロダクト/サービスをワンストップで提供してあげることはできないだろうか?

●コンセプトのサンプル4:オフィス複合機は、組織内および組織間にわたるドキュメントの送付、複製、保存といったオフィス労働者のジョブ履行に役立つ機能をワンストップで提供するようになってきています。

 中核となる機能的ジョブ全体に対する「プロダクト/サービス全体のコンセプト作り」は重要です。なぜならば、個々のニーズに対する機能レベルからスタートしてしまうと、プロダクト/サービス全体のストーリーが統一性や一貫性に欠けるものとなってしまう可能性があるからです。

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