デジタルオーバーラッピング時代の「OMO-UX」戦略──“守られている”と感じる顧客体験とは?

第1回

 「デジタルトランスフォーメーション」の掛け声のもと、マーケティングプロセスのデジタル化が進みつつあります。DMP(データマネジメントプラットフォーム)の構築やMA(マーケティングオートメーション)活用といった試行錯誤が多くの企業で行われている一方で、必ずしも大きな成果に繋げられていない現状も浮き彫りになっています。その中で隣国の中国では「O2Oは古い、これからはOMO(Online Merges Offline)」という標語の元、デジタルを活用したマーケティング変革の成功事例が多く生まれています。
 全4回予定の本連載では、前半2回では中国で起きているデジタルオーバーラッピングとOMOという現象について事例を交えてビービット宮坂から紹介し、後半2回では日本でマーケティングプロセスをデジタル化していくうえでのやり方や注意点について電通デジタル魚住が解説していきます。

[公開日]

[著] 宮坂 祐

[タグ] マーケティング 事業開発 UX OMO

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中国で起きている社会変化「デジタルオーバーラッピング」とは?

 中国のIT進化が凄いらしいという話はこの1年いろいろなところで耳にするようになっており、皆様の多くもある程度は認識をし始めているかもしれません。筆者が勤務するビービットは、2014年に上海に進出しUXコンサルティングのサービスを提供しているため、その驚くべき変化を肌で体感をしてきました。

▲誰も財布を持ち歩かなくなった

 まず驚くべきは、中国におけるスマホ普及率です。都市部では97~99%の普及率というデータもあり、日本や欧米をはるかに超えるスマホ大国となっています。そして日々のお金の支払いは、今やほぼすべてがアリペイかWeChatペイという決済アプリを通じてのものになっています。町の露天での支払いも今や当然のようにスマホですし、路上生活者がQRコード*1をかざして物乞いをしているほどです。現地人は誰も財布を持ち歩いていません。
*1: 「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です

中国の急速なデジタル化中国の急速なデジタル化

▲日々の購入や活動のすべてが個人と紐づいたデータに

 モバイル決済を土台に、今や中国人のあらゆる活動が個人と紐づいたデータとして収集されるようになっています。例えば、移動はMobikeなどのシェアサイクルが非常に人気です。町中に自転車が配置されており、乗りたいときにアプリをかざせば開錠でき30分16円程度で乗れます。降りたいときはそのまま乗り捨てできるため非常に利便性が高く、Mobikeの回収車が常に巡回してデータ解析から把握している乗られやすい場所に再配置するため、自転車を見つけることにも苦労しません。いまや生活に欠かせない移動インフラとなっており、個人に紐づいた移動データが収集されています。

 日々の食事も多くの方が、「饿了么(アーラマ)」に代表されるバイク便の出前サービスを利用しています。都市部のレストランのほぼすべてが利用可能で、オフィスワーカーにとってはランチや夕飯の欠かせないサービスになっています。ここ数年で、インスタントの袋麺の売り上げが大きく落ちたという話を聞くほどです。レストランに行ったとしてもテーブルごとにQRコードがあり、アプリでそのままメニューを呼び出して注文ができ決済もそのままアプリを通して行えます。これが何を意味しているかというと、日々の食事に至るまで個人と紐づいたデータに落ちているということです。

 スマホで利用可能なサービスの普及により、オンラインがオフラインを覆い、元々オフライン行動だった生活全てがデジタルデータ化して個人に紐づき、あらゆる行動データが利用可能な「デジタルオーバーラップ」された世界が現出しているのです。

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