長期的なネガティブ・スパイラルから奇跡的に復活した、都市デトロイト
2013年にデトロイト市が財政破綻した時、メディア各社が報じた市の様子はこんな具合だ。
1950年に比べて63%の人口減。人口の11.5%が65歳以上で82.7%が黒人であり、27.8%が2009年7月の時点で失業中。40%の街灯は電気がつかず、ミシガン州全体では貧困率が15.7%であるのにデトロイトでは36.2%。市内の救急車の2/3は動かない。そして警察に通報後、警官が到着するまでは平均58分かかる。全米平均の11分を大きく上回る所要時間だ。
これらの数字は、市内の閉鎖された建物の画像と共に紹介された。デトロイトは廃墟にあふれた、打ち捨てられた都市だというイメージが広まった。
ルイス氏はこういった紹介の仕方について、以下のように話した。
カメラマンは荒廃している場所をあえて探し、高性能のカメラで劇的に撮影しました。デトロイト市は過剰に荒廃した姿で紹介されるという、アンフェアな状況になったのです。
今、ルイス氏たちがデトロイトのダウンタウンを歩く時、上記の数字から想像するものとはまったく違うものを街の人々から感じるという。市のマーケットは活気にあふれ、公共空間で人々がバスケットボールに興じたり、子供たちが公園の噴水で遊んだりしている。街のいたるところにアートや都市型農業を行うスペースがある。人々はデトロイトのことを誇りに思い、市がいつの日か完全に復活すると信じている。そして、「今まで様々なとが起こったけれど、苦しい時を過ごしてきて、今一緒にここにいるのだ。これからここはもっと良くなるのだ」という仲間意識と希望に溢れたエネルギーを感じるというのだ。
デトロイトの歴史を振り返ると奇跡的なことである。なぜなら、デトロイト市は長らくネガティブ・スパイラルにはまりこみ、その歴史は「地域住民の分断の歴史」ともいえるほどのものだったからだ。現在のデトロイトの状況を理解するためには、デトロイトの歴史を知ることが不可欠だとルイス氏は話す。