たった4泊5日でバスケ部の2年半に匹敵するチームビルディングを経験し、ファシリテーターを志した
──長尾さんは、ファシリテーターという仕事にどのように出会ったのでしょうか?
長尾彰氏(組織開発ファシリテーター、以下敬称略):僕が19歳で大学2年生の時、足柄グリーンサービス(現在の社名は株式会社アグサ)という会社が山の中に野外教育の施設を作りました(注1)。アメリカの「プロジェクト・アドベンチャー」という非営利団体がやっていたプログラムをそこでやるから参加しないか? と誘われたんです。
そのプログラムは、自然の中でアドベンチャー、つまりやったことがないことにみんなで挑戦するという体験を通して、リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディングといったことを学ぶと同時に、その場にいる人たちの関係性も育むことができる、というものでした。
その時は、24人が2グループに分かれ、それぞれにアメリカ人の指導者がひとり付いていました。4泊5日のプログラムでしたが、自分が高校時代のバスケ部で2年半かけてつくりあげた良いチームの関係性が、それだけの期間でできてしまった。「これはいい!」と感動したんです。
プログラムの最終日、そのアメリカ人に「あなたの仕事、おもしろそう。なんていう仕事なの?」と聞いたら「ファシリテーター」だと。その足でその会社の事務所に行って「僕もファシリテーターになりたい。ここでバイトしたいんですけど」と頼み、当時住んでいた愛知から神奈川県の足柄に通うようになりました。
──現場に飛び込んで身体で覚えて行ったんですか?
長尾:そうですね。開業当時は小学生や中学生向けのプログラムをやっていたので、最初はそういうプログラムを任されて、だんだん企業研修もやるようになりました。でも、「ファシリテーターとは何か」ということは知らなかったんですよ。大きな書店に行って見つけた『ファシリテーター型リーダーの時代』(フラン・リース著 プレジデント社)という本を読んで、「ゲームをやって、それを振り返って──、ということを繰り返すのがファシリテーターじゃないんだ」と知りました。
さっきのアメリカ人に教えてもらって、「プロジェクト・アドベンチャー」の手法についてまとめられた本なども読みました(注2)。その本で、チームの発達段階やタックマンモデル(アメリカの心理学者タックマンが提唱した、チームの発達段階を4ステージに分けたモデル)、カウンセリングのことなんかも知ったんです。
注1:PAA21 http://paa21.co.jp
注2:『ISLANDS OF HEALING: A GUIDE TO ADVENTURE BASED COUNSELING』、『Exploring Islands of Healing: New Perspectives on Adventure Based Counseling』(いずれも、J・ショーエル他著)