なぜ“静と動の緩急”が人にも都市にも必要なのか──自然とテクノロジーとアートが創造性を高める理由

第1回ゲスト:東京都市大学 環境学部 特別教授 涌井 雅之(史郎)氏【後編】

 連載『デザインによる都市OSの変換』は、佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE)と小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社)の2名を鼎談ホストに、現在ターニングポイントを迎えている都市デザインのあり方について、横断的な視点を持つ各界のトップランナーを迎えて議論を深めていく企画である。ランドスケープアーキテクトの涌井雅之(史郎)先生をお招きして、江戸の街づくりから考える日本の都市の可能性や今後の都市のあるべき姿を議論した。前回は江戸の街づくりから考える日本の都市の可能性を、クリエーションとイノベーションの観点から話し合った。後編である今回は、多摩川流域における自然とテクノロジーとアートの活用の会カギとなる「静と動の緩急」に話題が及んで対談内容を紹介する。

[公開日]

[語り手] 涌井 雅之 小林 乙哉 佐宗 邦威 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 ドローン 再生可能エネルギー サーキュラー・エコノミー サーキュラー・デザイン

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「エコロジカル・コリドー」としての多摩川流域における、ドローンの物流システムとしての活用

佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer、以下敬称略)前回はサーキュラー・エコノミーを300年も前から行なっていた江戸の都市設計の話題から、余白と密集の大切さ、多摩川が個人のクリエイティビィを発揮するための装置になる可能性があるという話をお聞きしました。多摩川流域は多摩川という余白が多い空間があるので、余白と密集のバランスを取れる場所というわけですよね。

一方で、多摩川では、ドローンなどのテクノロジーの発展に関して新しい可能性をいろいろと実験できる地域だとも思うのですが、どのように考えて使っていくとこの地域にとっては適した形になるのでしょうか。

涌井史郎(雅之)氏(東京都市大学特別教授、以下敬称略):基本的に、多摩川は重要な「エコロジカル・コリドー」(詳細は前回参照)で、奥地の自然と都市の自然が行ったり来たりする「通路」なんです。その巨大な生態系のネットワークを傷つけてはいけないという前提が厳然とあります。また、多摩川の水は残念なことに下水道の水がほとんどなので、利用法は限定されます。加えて、水深が浅いので舟運(しゅううん)には使えません。

一方で、ここが余白を持つ空間であることは間違いありません。障害物は橋や送電線くらいで、スペースとしてひらけています。となると、移動体のルートとしては非常に使いやすいんですよね。たとえばホバークラフトもどきの移動体ができたら、八王子あたりから多摩川を通って羽田まで20分くらいでつけるようになるかもしれない。

また、巨大な流通ネットワークにも使えるかもしれません。今、地下の有効利用は始まっていますが、将来的には空の立体的な有効利用が始まるはずです。

小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社 課長補佐、以下敬称略):ドローンは、TAMA Xの構想でも非常に可能性があるものとして想定しています。

涌井:そうですね。荷物を積んだドローンを街中で飛ばすよりも、多摩川上空を幹線として2トンくらいの荷物をドローンで飛ばして中継地まで運び 、そこから仕分けして500g、1kg等のドローンを飛ばすようなルートの方が良いでしょうし。そんな物流の方法ができるかもしれないですね。

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