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キャッシュレス化が進み、スマホアプリがカーナビのように「贈与経済的行動」をアシストする未来とは?

第4回(最終回)ゲスト:慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員 斉藤 賢爾氏【後編】

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 シリーズ最終回となる今回は、慶應義塾大学 SFC研究所と早稲田大学大学院でブロックチェーン、トークンエコノミー、デジタル通貨、ポスト貨幣経済について研究し、関東学院大学でNPOの経営を教える斉藤 賢爾氏を迎え、今後の都市の姿を語り合った。  前編では、貨幣経済が終焉に向かう際に、どのような移行プロセスがあるのかを語り合った。続く本稿では、トークンエコノミーの可能性や危険性、贈与経済が進展する社会の未来像を語り合った。

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トークンエコノミーや地域通貨によって「域内の交流」と「信頼」が生まれるメリット

小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社 課長補佐、以下敬称略):東急電鉄では街づくり、地域づくりの活動もしていますが、お祭りやイベント、清掃活動等の地域活動は、基本的には町内会や自治会組織がボランティアベースでやっていて、そういった地域の中で可視化されていない価値ある行動があると感じています。一方で、地域組織の高齢化が進むことで、担い手が減少しているという問題が全国の地域で起こり始めています。そういう地域活動に対してトークンによって価値の可視化をすることで新たな地域づくりの形が作れないかと考えています。

佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE代表、以下敬称略):トークンエコノミーは、今使われている通貨ではなく、誰でも通貨の発行主体になれるトークン、つまり仮想通貨により形成される経済のことですよね。今まで流動させることのできなかった価値を流動させて、世の中に価値として還元できるかもしれないと期待されています。斉藤さんはトークンエコノミーをどう考えていらっしゃるのでしょうか。

斉藤 賢爾氏(慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員、以下敬称略):トークンエコノミーは、もともとは心理学用語なんですよね。ボーイスカウト等の青少年活動が、何かいいことをしてバッジをもらうことと同じように、外発的な動機づけとしてトークンを与え、それを自発的な行動に変えていくということだと思います。

 だとすると、地域経済におけるトークンも金銭的なもので外発的な動機づけなので、ともすると、それがないとやらないということになりかねません。なので、一時的なものにしておいたほうがいいと思います。

 一方で、地域通貨によって地域の交流や信頼が生まれるということはあるでしょう。成功した地域通貨の例として大分県の湯布院町で行われた「地域内交易システムyufu(ユフ)」というものがありますが、今は使われていないと聞きます。今は使われていないのに、なぜ成功かというと、そもそも地域通貨を導入した理由が、コミュニティの中で助け合える関係を築くためだったんです。それが、yufuによって人々が助け合うようになり、最終的には助けてもらった人が「じゃあyufuで払います」というと、「そんなのいいよ、水臭い」と言われて、地域通貨が使われなくなった。つまり目的は達成されたから、成功なんです。

佐宗:行動を変えるための仕掛けとして地域通貨が使われたのですね。

斉藤:それが一つの理想的な姿だろうと思います。一方で千葉県千葉市西千葉地区の地域通貨「ピーナッツ」は継続しています。西千葉の地域通貨は使う時に「アミーゴ」と言いながら握手をするのが必須で、1ピーナッツは1円と同価値です。

 これが継続しているのは、おそらく西千葉地区に千葉大学があるからです。学生は4年経つと出ていき、常に新しく入ってくる人もいる。地域住民が定期的に入れ替わる文教都市のような地域通貨は継続しやすいのでしょう

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