2050年の“貨幣経済の終焉”に向けて生活者に影響を与える、「ブロックチェーン」と「貨幣」の本質

第4回(最終回)ゲスト:慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員 斉藤 賢爾氏【前編】

 連載『デザインによる都市OSの変換』は、佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE)と小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社)の2名を鼎談ホストに、現在ターニングポイントを迎えている“都市のあり方”について、横断的な視点を持つ各界のトップランナーを迎えて議論を深めていく企画である。
 最終回となる今回は、慶應義塾大学 SFC研究所と早稲田大学大学院でブロックチェーン、トークンエコノミー、デジタル通貨、ポスト貨幣経済について研究し、関東学院大学でNPOの経営を教える斉藤 賢爾氏を迎え、今後の都市の姿を語り合った。

[公開日]

[語り手] 斉藤 賢爾 佐宗 邦威 小林 乙哉 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 社会・公共 ブロックチェーン ベーシックインカム トークンエコノミー 贈与経済

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学校教育以外の学びが重要になってくる世の中とブロックチェーン

佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE代表、以下敬称略):この連載で、小林さんとともにさまざまな方と鼎談をする中で、多摩川流域でドローンを活用したり、自然エネルギーを活用したり、自然を体感するという心地よい暮らしの背景に、さまざまな技術が目立たない形で溶けていくのが未来の都市になるのではないかと考えるようになりました。

 斉藤さんは著書『信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来 (NextPublishing)』の中で、「貨幣経済が衰退する」と書いていらっしゃいました。講演等でも人と人とのつながり、社会構造、行動の構造が変わっていくとおっしゃっていますね。まちづくりを考える上で重要な観点なので、お話を伺いたいと思いました。幅広い活動をなさっていますが、それも全て今後の世界を考えてのことなのですよね。今、中心に据えていらっしゃる活動はどんなものなのでしょうか。

信用の新世紀信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来 (NextPublishing)』(インプレスR&D・刊)

斉藤 賢爾氏(慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員、以下敬称略):今一番力をいれているのは一般社団法人アカデミーキャンプという、福島の子供達のための遊びと学びのNPOです。東日本大震災時に福島第一原発事故が起きたのがきっかけで始めたのですが、小中学生を主な対象として、大学でやっているような研究を追体験したり、様々な「その道のプロ」とガチンコで向き合う体験ができるようなキャンプなんです。2018年は「オッケーグーグル、宿題やっといて!」 というテーマでキャンプを行い、たとえば計算ドリルを自動化するプログラミングを行いました。

 今、現実の世界と小中学校の教育は相当乖離してしまっています。学校教育は、昭和20年の戦後すぐにメジャーアップデートをした後、ほとんど変わっていないのではないでしょうか。しかも、元々は富国強兵のために兵隊を育成するという発想でできた仕組みから、経済成長のための工場労働者に対象が変わっただけで、根本の思想は変わっていないんですよね。

 しかし、これからは正解のない時代。誰かに何かをやれと言われて実行する人を育てる教育よりも、本人が主体的にやりたいことを支える教育のほうが現実に即しています。つまり、私たちのアカデミーキャンプとか孫泰蔵さんのクリエイティブ・コミュニティー「VIVITA」のような、Non-Schoolとでも呼ぶべき環境で育つことに価値があるかもしれないんです。

佐宗:確かにそうですね。その教育NPOと先生の専門のブロックチェーンとは、どういった関係があるのでしょうか。一般的にブロックチェーンというとまだまだビットコインを想起する人も多いですよね。

斉藤:ブロックチェーンは台帳技術、つまり記録された情報が改ざんされていない、という証明ができて、その情報を安心して多くの人が参照できるような技術です。教育とブロックチェーンの関係でよく言われているのは、学位証明書や成績証明書ですが、それよりも重要なのは、先ほど述べたNon-Schoolでの学びに関してです。こういった学びの組織の「真っ当さ」を似た取り組みをしている団体同士でピアレビューのように担保していくことや、学びの体験をレジストリー(登記簿)に書き込むことです。とはいえ、ブロックチェーンにもまだ技術的に課題はあります。

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