経産省DXレポートが明かす、現在の日本の「IT課題」と「2025年の崖」とは?
大企業が本気で改革しようと考え始めています
講演の冒頭、及川氏はこう切り出した。及川氏はマイクロソフトやグーグルでの製品開発、プロダクトマネージャとエンジニアリングマネージャを経て、ベンチャー企業で勤務したのち、現在は独立して企業の技術顧問やアドバイザリーを行っている。高度成長期の頃の輝きを失った日本をもう一度強くしたいという思いで、独立後はスタートアップを中心に応援していた。しかし最近、日本の大手企業からも真剣な相談を受けているというのだ。
及川氏の支援メニューは「純粋な技術支援」「プロダクトマネジメント」「組織マネジメント」の3つを柱としている。30年間のIT業界での経験から、「ITが流行っているがデータ活用はどうしたらいいか。社内で考えたアーキテクチャーをレビューしてほしい」といった純粋な記述支援を行うほか、日本企業が弱いプロダクトマネジメントや、それを支える組織マネジメントのコンサルティングを行っている。
プロダクトマネジメントに関連して、高度成長期の日本は製造業が強かったと及川氏は話す。プロダクトマネジメントに関連して、高度成長期の日本は製造業が強かったと及川氏は話す。しかし、その強さは、先進諸国に追いつけと、彼らを模倣しながら、高い生産性と品質、低コストで競争力を高めたところにあったように思う。だが、これからの時代は新しいものを作っていく必要がある。しかし、これからの時代は新しいものを作っていく必要がある。そして現在の日本が振るわないのは、IT力に関係があるのではないかと及川氏は仮説を立てている。そのIT力の課題が全て書かれているとして及川氏があげたのが、2018年11月に経済産業省が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』だ。
DXレポートには、以下のように書かれている。
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出し、柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション (=DX)の必要性について理解しているが、1)既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化しており、2)経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
(「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」より)
「既存システムのブラックボックス化」とは、ユーザ企業において、自社システムを外部ベンダーに丸投げ的に依頼しているために中身が不可視になり、自社では修正できない状況を指す。そして、この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある。経産省はそれを「2025年の崖」とDXレポートでは書き、警鐘を鳴らしている。