「ラオスの虎」たちに見出した、“固有名詞”で生きる姿勢
岩佐文夫さん(以下、敬称略):トラリーマンの特徴に関しては、あとは「他の虎と仲良くできる」。たしかにそうかもしれないですね。
「ベンチャーの虎」、ベンチャー経営者はまさに僕が編集長時代に一緒に作ってきたような方々で、もともとリスペクトしていたし、地方の経済基盤を築いている「ヤンキーの虎」とはフリーランスになっていろんな人と会う機会をつくるうちにつながりができてきました。
今は特に島根県の海士町や宮城県の女川町の虎たちと仲良く付き合っているのですが、彼ら、本当にすごいんですよね。自分と価値観が違う人たちまで包容しながら、「あ」と言えば「うん」までやってくれるネットワークを築いている。僕は世界の先端を伝える雑誌をつくって世の中を知った気になっていたけれど、全然知らない多様な世界がまだまだあるんだと気づかせてもらっています。凄いリーダーっていろんなところにいますね。
知らない世界に足を踏み入れて衝撃を受けたと言えば、ラオスでの滞在もまさにそれで。ラオスにいる日本人に、めちゃくちゃ魅了されちゃったんですよ。
仲山進也さん(以下、敬称略):ラオスにいる日本人って、どんな人ですか?
岩佐:ですよね? どんな人たちか、すぐに浮かばないですよね? ベトナムの場合は今や中国を抜かんとする生産地で各国の大企業が進出していて、ハノイには日本人も9,000人くらい住んでいるんですよ。企業から派遣されて来ている方が多いんです。
それに対し、ラオスは企業も進出しないし、観光資源もパッと思いつかないような国ですよね。でもそんなラオスの首都ビエンチャンにいる日本人は400人くらいです。それぞれ何らかの個人的な目的を持って暮らしている人ばかりで、すごく面白いんですよ。例えば、ブラインドサッカーのラオス代表チームを立ち上げてASEANの大会で2位まで押し上げちゃった人や、ラオスにも日本にもないような居心地のいいカフェをやっている人とか。
ラオス人って自己肯定感が強くてすごく魅力的なんですけれど、「あ」と言えば「あ」しかやってくれないそうなんです(笑)。日本の常識がもちろん通用しない。そんなラオス人と根気強く付き合いながら奮闘している「ラオスの虎」にたくさん会ってきて、ものすごくパワーをもらえました。全員が“固有名詞”で生きている人。誰に言われるでもなく、自分が成し遂げたい目的のためにそこにいる。