PDCAによる「改善」だけでは、イノベーションは生まれない
日本では第二次世界大戦後以降、PDCAサイクルで物事を改善しながら進めることを仕事の行動原則としてきました。商品開発にしろ生産にしろ、目標達成に向けて品質向上とコストダウンの改善サイクルを回し続けました。しかし今は、このPDCAサイクルだけを徹底し続けていることが、日本企業の新たな手法や領域に取り組むチャレンジを阻害しています。その理由の一つに、これまでのやり方が足かせとなって発想の転換ができなくなるということが挙げられます。そもそもPDCAは「改善」を前提とした活動です。これによって事業基盤を維持していくことができ、事業運営上非常に重要です。しかし「破壊的イノベーション」が生まれて事業構造の転換が迫られる際にも、既存事業の延長線上で発想してしまうことが問題なのです。
そしてもう一つの理由は、変化への対応スピードが遅れてしまうことです。成功企業であればあるほどこれまで築き上げてきた地位・ブランドを維持するために「同じやり方を踏襲し、過去を否定しない」という、組織における慣性の法則が働きます。「改善」ではなく「新しいことへの挑戦」であっても、既存事業と同じように「PLAN」を重視して様々なリスクも踏まえた綿密な予測や計画を立てしまい、結果として「DO」の動き出しが遅くなるのです。