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東京大学大学院・高木准教授に聞く、DXという社会変化を理解するための概念「デフレーミング」とは

ゲスト:東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授 高木 聡一郎氏【前編】

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デジタル・トランスフォーメーション(DX)の土台となる技術を、二種類に分けて考える

Biz/Zine編集部・栗原(以下、編集部):DXという活動は顧客との接点で行われたり、製造のプロセスや商品開発の過程で行われたりと、ビジネスの川上から川下に至る経営の全ての領域が対象となります。DXにより確かに生産性は上がり、経営プロセスも変わっていくように思いますが、一方でITベンダーのマーケティング用語だというような認識を持っている人も多いように感じます。

東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授 高木聡一郎氏(以下、敬称略):DXはデジタルの技術で本質的な変化を生み出そうという掛け声ではあると思うのですが、デジタルが社会をどういう風に変えていくかに関してはあまり語られていないし、明確な方向性は見えてきていないですからね。私の関心は「情報技術」「組織」「経済」の三つですが、その三つから考えることでその方向性が見えてくるように思っています。

編集部:DXを議論する際、情報技術の点でどんなことを意識すべきでしょうか。

高木:AI、IoT、5G、プラットフォーム、ブロックチェーンなど、DXの土台とされる技術はいろいろありますが、その技術を大きく二種類に分けることができると考えてます。その技術の種類によって、社会にもたらす影響が異なるんですよね。その点を意識した方がいいのでは、と思います。

編集部:二種類ですか。どのように分けるのでしょうか。

高木:第一グループは「AI、IoT、5G」などの技術です。AIによって多くの業務が自動化され、IoTでさまざまなデバイスが関連しデータを収集することによって、多くのデバイスがつながりあって一つの業務を自動的に回すことができるようになります。そして5Gの誕生によってデバイス同士がリアルタイムに繋がりやすくなり、さらに自動化が加速します。

 そうなると、人間にはその一連の動作を設計する役割は残りますが、今まで人間がやっていた仕事がマシーンによって置き換えられる部分は増えてきます。経済学的には生産性が上がるという状況です。ただし考えなくてはならないのは、生産性が上がっても、需要はそれほど増えないということです。需要がない中で生産性だけが上がっていくと、当然労働がいらなくなります。

編集部:今まで人によって行われてた仕事の多くがなくなっていくという話になりますね。この第一グループのビジネス活用は、非常にわかりやすいんですよね。

高木:コストダウンにつながりますからね。ただ、ここで考えるべきは、生産性が上がって労働力が不要になること自体は、AI等が出てきてから初めて起こった話ではなく、過去100年ほどずっと猛烈に進められていることだということです。たとえば馬車で荷物を運んでいた時代にトラックや飛行機といった輸送手段が出てきたときにも、生産性は向上しました。ExcelでやってきたことをAIで代替した際の生産性の差分はどれくらいあるのか。もしかしたら飛行機の登場の方がインパクトは大きいかもしれません。冷静な議論が必要だと思います。

 この第一グループの技術は、今後の働き方や企業の形の変化を考えるとうまく活用していくべき技術なので重要ではありますが、煎じつめていくと生産性の話になるので、こちらだけを考えても、いかに需要を生み出して人間の雇用を守るかという話にしかなりません。それよりも、私はもう一つの技術グループのほうに関心をもっています。

編集部:第二グループが気になりますよね。詳しく教えてください。

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