ここ10年のスタートアップの投資に関する大きな環境変化とは
ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ株式会社 堤孝志氏(以降敬称略):著書である『アントレプレナーの教科書』や『スタートアップ・マニュアル ベンチャー創業から大企業の新事業立ち上げまで』が日本でも翻訳されてずいぶん時間が経ちました。アメリカでの出版は2005年ですが、その時点と今ではスタートアップを取り巻く環境にどんな変化があったとお考えですか?
スティーブ・G・ブランク氏(以降敬称略):一番大きな変化は、今では起業家がどこにでもいるということですね。かつては今よりも情報を得るのが難しく、地球規模どころか国家規模、あるいは同じシリコンバレーにいても情報にアクセスすることは難しく、誰かとコーヒーを飲んでようやく得られる、というような状態でした。しかし今は、起業家も多く、情報にもアクセスしやすくなっています。
二つ目の変化は、起業家にとってのLEANという考え方が浸透したということです。私が『アントレプレナーの教科書』を、エリック・リースが『リーン・スタートアップ』を出す前は、スタートアップのための方法論は確立されていませんでした。しかし書籍が出て、世界の起業家は、たとえうまく実践できてはいなかったとしても、LEAN、つまりすばやく行動し、すばやくピボットし、コストをかけすぎないでおくべきだということを知っています。それが2005年から2015年くらいまでに起こった変化です。
そして、ここ5年ぐらいの大きな変化を象徴するのが「孫さん」です。
堤:ソフトバンクの孫正義さんですか?
スティーブ・G・ブランク氏
シリコンバレーの元シリアルアントレプレナー。CEOを含めてさまざまな役職で8社のベンチャー企業の創業と立ち上げに携わる。起業家活動から引退後は、アントレプレナーシップ教育に従事。スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール、コロンビア大学にて顧客開発とアントレプレナーシップについて教鞭をとる。顧客開発モデルの実践プログラム「リーンローンチパッド」を開発。2009年スタンフォード大学マネジメントサイエンスエンジニアリング学部教育者賞、2010年カリフォルニア大学バークレー校Earl F Cheit優秀教育者賞を受賞。