ネットワーク理論を活用した、合意形成による“イノベーションの羅針盤”の創出とは?

ゲスト:VISITS Technologies株式会社 松本勝氏、SAPジャパン株式会社 大我猛氏【中編】

 今回のゲストは、VISITS Technologies株式会社 CEO/Founderの松本勝氏、SAPジャパン株式会社でバイスプレジデント チーフ・トランスフォーメーション・オフィサーとして新規事業を立ち上げているイントラプレナーであり、イントラプレナーの支援活動にも取り組む大我猛氏。両名による「イノベーションテック」対談を、前・中・後編にてお届けする。
 中編では、松本氏がイノベーションテック「ideagram」を着想したきっかけ、中核となるネットワーク理論に基づく「合意形成」、そのアルゴリズムを応用してビジョンがどのくらい組織に浸透しているのかを測定する「visiongram」、合意形成技術の様々な適用可能性などが語られた。

[公開日]

[語り手] 松本 勝 大我 猛 [聞] 栗原 茂(Biz/Zine編集部) [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 和久田 知博

[タグ] 事業開発 AI Innovation Tech CI コンセンサスインテリジェンス

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AIでは解けない、人間の強みとしての「創造性」に関心があった

──「ideagram」は本当にユニークなツールですが、そもそも松本さんはどのような経緯から、現在の事業を構想されたのでしょうか。

VISITS Technologies株式会社 松本勝氏(以下、敬称略):大学院を卒業してゴールドマン・サックスでトレーダーとして働いていた頃の経験が起点なんです。人を介さず自動的に取引を行なう「アルゴリズムトレーディング」のシステム開発にもチームとして関わる機会があり、その時にAIでは解けない人間の強みとして「創造性」に興味をもつようになったんです。考えてみればトレーダーがトレーダーの仕事をAIで代替してしまおうという仕組みをつくろうとしていたんですから、因果ですよね(笑)。

 創造性とは、デザイン思考に代表されるように、誰かに共感して困りごとを見つけ、それを解いてあげるという「目的」を見つけることなんです。一方、AIは目的を見つけることは苦手でも解くことは得意。だからこそ、両者が共存し合う世界が到来した時に、人間の創造性をAIによって支援する仕組みをつくることができないかと考えたわけです。

──ゴールドマン・サックスを退職された後、すぐにVISITS Technologiesを設立されたのですか。

松本:VISITS Technologies設立までに、AIを活用したアルゴリズムでヘッジファンドを運用すると共に、AI時代を生き抜く人材の育成、特にデザイン思考を活用した創造性人材の育成を大きなテーマにしてきました。

 そもそもAIでは、基本的に過去のデータからベストプラクティスを引き出し、それが未来においても再現性が高いという前提になっています。会計システムが扱うようなものは比較的予測可能なのですが、リーマンショックのようないわば“ブラック・スワン的”な現象への対応はとても苦手で、大きな損失が出たんです。そこで、退職後立ち上げたヘッジファンドでは「株の値動きではなく、それを分析するアナリストの分析」を行ないました。

──それは面白いですね。アナリストの分析となると、その人の直感、ひらめきといったものも含まれるんですよね。

松本:そうなんですよ。アナリストの発言を自然言語処理でデータ化して、その後の株の値動きと合致していたかどうか比較したんです。いわば「アナリストの通信簿」みたいなものをつくりました。結果としては、有能なアナリスト一人による評価だけではどうしてもブレが出ますが、それが複数の有能なアナリスト同士が共通して良いと評価したものは統計的に信頼度が上昇することがわかりました。

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