米国アクセンチュアの「Accenture 2019 Global Risk Management Study(アクセンチュア 2019 グローバルリスク管理調査)」(以下、本調査)によると、金融機関のリスク管理部門を率いる管理職の大多数が、自身が破壊的技術のリスクを適切に評価できる能力があるとは考えておらず、新たな脅威により効果的に対処するために新しい戦略とツールの積極的な導入に意欲的であることが明らかになった。
本調査によると、組織全体で人工知能(AI)を導入する際のリスクを適切に評価できると回答したリスク管理部門管理職はわずか11%であり、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)やブロックチェーン導入のリスクに関してはそれぞれ9%、5%と、さらに下回っている。
さらに本調査では、外部のリスク要因がより複雑化するなか、リスク管理部門は新たな脅威や加速する変化に対応していくために、これまでのやり方を変えていく必要があると考えていることも判明。例えば、回答者の72%が、相互に関連する複雑かつ新たなリスクがかつてないほど急速に発生していると答えている一方で、回答者の42%は、リスク管理部門が一定の効果を上げているのは、外部のリスク環境の変化への迅速な対応のみだと答えてる。
AIや自然言語処理などの破壊的技術の不適切な導入は組織全体にリスクをもたらす可能性がある一方、こうしたテクノロジーの導入と堅牢なリスクへの備えの間には、強固な相関関係があることが本調査により明らかになりました。例えば、将来のリスクに対して過去2年間で行った対応に満足していると答えたグローバルの回答者の割合は、リスク管理部門で機械学習を活用している場合は73%だったのに対し、機械学習や高度なアナリティクスを活用していない場合は45%に留まっています。
リスク管理部門における高度かつ大規模なテクノロジー導入は依然として限定的だという。グローバルにおいて、ほぼ全てのリスク管理部門が日常業務の自動化にRPAの活用を始めている一方で、AIや予測モデリングなどの高度なアナリティクス手法やデータセットを適用していると答えた回答者は40%に留まり、機械学習の活用に至ってはわずか10%でした。こうしたテクノロジーには、リスクを軽減しリスクの専門家のパフォーマンスを改善する大きな可能性があるため、導入しなければ、リスク管理部門はこうしたチャンスを逃すことになると本調査は指摘。
本調査によると、サイロ化されて保存されているデータ、不明瞭な規制やレガシーシステムとの連携という3つのデータに関する課題が、リスク管理部門の高度なアナリティクス手法やテクノロジーの導入を妨げているとしている。
リスク管理部門の経営層は、有益な知見を生むためにデータの収集や分析方法を改善する必要があることを理解しているという。例えば、リスク管理部門経営層の63%が企業全体でデータ収集能力の改善に取り組んでいると答え、66%が分析能力の向上に力を入れていると回答。また、本調査では、脅威に対処しビジネス全体の価値を高めるには、データをより迅速に取得し、さらにマーケティングやソーシャルメディアなどの新たなデータソースにも対応する必要があることを本調査では指摘している。
ビジネス成果の向上にリスク管理部門が果たす役割の重要性を他部門が認識していると考える回答者は、わずか55%でした。リスク管理部門の管理職がいかに組織全体に付加価値をもたらすことができるかについての認識を高めるには、部門間の連携強化が不可欠であると、本調査は指摘。リスク管理部門は財務部門との連携を強化しており、回答者の75%が財務部門と密接な関係を築いていると答えている。