デジタルで“スターバックスらしさ”が毀損しては意味がない
日本でのビジネスを展開して24年目を迎えたスターバックス。日本全国に1500店舗以上を展開し、多くの利用客で賑わっている。そのバックヤードで様々なデジタル戦略を担うのが、濱野氏が本部長を務める「デジタル戦略本部」だ。ロイヤルティプログラム「Starbucks Rewards™」や、「Mobile Order & Pay」の開発やECサイトの運営、プリペイドカード「スターバックス カード」やeGift(ドリンク、フードチケット)の運用など、様々な施策を担う。30名ほどが所属しているが、濵野氏曰く「カバーすべき部分は広く、更なる人材確保に力を入れたい」状況にあるという。
また、スターバックスでは年間100店舗の勢いで出店しており、駅前、街なかだけでなく、ドライブスルーのある郊外店や公園内の常設店も増えている。2020年3月には高輪ゲートウェイ駅に“これまでにない”タイプの店もオープン予定だ。
個性を前面に打ち出した店舗といえば、2019年2月に東京・目黒にオープンした「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」が記憶に新しい。世界で6店舗、うち5番目に開店した東京店は焙煎工場も兼ねており、店舗内でローストした豆のコーヒーを味わえる。ティーブランド「TEAVANA™(ティバーナ)」の他、カクテルなど、通常の店舗とは異なる商品も提供する。開店当初は6時間待ちの混雑ぶりで、今も土日は整理券が出されることもあるほどの人気店だ。フラッグシップと位置づけられ、新しいサービスやメニューなども検証されている。
そうした店舗戦略でも攻め続ける、スターバックスの「デジタル戦略」とはどのようなものか。濵野氏は3年前に入社した当初、「スターバックスとデジタル」の組み合わせにやや“ギャップ”を感じたという。米国スターバックスはデジタル戦略を積極的に展開し、それでビジネスにドライブをかけてきた点もあるが、それは裏側のこと。事業方針としては、「顧客に対して“ぬくもり”や“人と人とのつながり”のある場をサードプレイスとして提供する」と謳っており、日本においては一層重視されてきたからだ。
しかし、入社して戦略を立てる立場になり、濵野氏は「社員やスタッフと意見交換をすることで、思考を深めてきた」と語る。そして現在、「スターバックスが持っている自社の強みをデジタルテクノロジーで最大化していくこと」を骨子としてデジタル戦略を考えるようになったという。
濵野氏は、以下のように強調する。
「一般的には、デジタル化により自社の強みを消してしまうことが多いのではないか。オフラインでビジネスをしている会社ほどその傾向があり、デジタルテクノロジーで利便性を高めることは、ともすれば他社と同じことをやることになり、自社の強みを消すことにつながってしまう。企業は自社の強みをしっかりと見出した上で、他社との差別化につながるデジタル施策を考えなければならない」