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成熟企業が生き残る道は「両利きの経営」──チャールズ・A・オライリー教授が語る本質とは?

「両利きの経営」の本質 セミナーレポート:前編

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 2019年に日本語版が刊行された『両利きの経営』(東洋経済新報社)は、「既存事業を深掘り(深化)しながら、新しい事業の柱を探索する経営手法」であり、成熟企業が新興企業に駆逐されることを防ぐ道を示すものとして注目されている。  その共著者であり「両利きの経営」の提唱者であるスタンフォード大学経営大学院チャールズ・A・オライリー教授が「両利きの経営を実践している」と認めた企業に、日本のAGC(旧旭硝子)がある。その取り組みは、2020年3月刊行の『両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』(英治出版)に詳しく紹介されている。この本の出版を記念して書籍の関係者を集めて、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科の梅本龍夫特任教授の進行で講演とディスカッションが行われた。その様子を前・後編でお伝えする。

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破綻企業の失敗の原因は、技術ではなくリーダーシップ

 まずはオライリー教授から、長年にわたって業績を上げてきた企業がなぜ破綻するのか、それらの企業が抱えた問題とどうすれば破綻を回避できるのかについて講演が行われた。

 オライリー教授が提唱した「両利きの経営」とは、同じ企業の中で成熟事業と新規事業の両方を成功に導く組織能力のことを指す。それは同氏が過去30年、破壊的変化にさらされる様々な産業において、変化への対応に成功する企業と失敗する企業の分析を進めてきた結果、得られた知見である。

 欧米や日本の企業を詳しく調べた教授は、産業の変化を乗り越えられるか否かを分けるポイントは「技術ではなくリーダーシップにあった」と結論づけている。

 例えばビデオ・DVDレンタルのブロックバスターは2002年時点では売り上げ50億ドル規模の大企業で、その年に株式公開したネットフリックスはまだ小さな企業だった。しかし、8年後の2010年にブロックバスターは破綻し、ネットフリックスは現在も成長を続けている。

 両社の違いはリーダーによる変化の捉え方にあるとし、オライリー教授はネットフリックスの創業者でCEOのリード・ヘイスティングスの考え方を紹介した。

「彼に話を聞くと、リーダーとして今日の事業と明日の事業の両方を常に考えていると言っていました。(創業時の事業であった)DVDの郵送サービスと(新規事業である)動画配信でどうやって競争するのか、そして10年後のコンテンツ制作事業についても、考え続けていたと言うのです」

 教授はもう1つの事例としてコダックと富士フイルムの例も挙げた。かつては素晴らしい企業だったコダックが変化への適応に失敗し、富士フイルムが化粧品やLED、再生医療などの領域に進出して成功できたのは、経営者が組織のカルチャーを変えることができたかどうかの違いであると指摘した。

「私たちはMBAの学生には戦略の重要性を理解してほしいと思っています。まずは戦略を立てなければいけませんが、それだけでは十分ではなく、戦略を立てた後は主要な成功要因を設定しなければなりません。つまり、戦略をいかにして一連の重要なタスク(KSF:Key Success Factors)に落とし込むかが重要です。そしてタスクが決まれば、必要なスキルとモチベーションを有する人材がいるのか、組織構造や評価・報酬の制度が適しているかを考えなければなりません。最終的には、選択した戦略の実施にあたり組織のカルチャーは正しいかを考える必要があります。これらの要素が強く結びついているほど業績が上向きます。そして、この結合の鍵が組織カルチャーなのです」

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