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Transformation20から見る柔軟な組織変革

なぜ企業は危機に直面してから変革を検討するのか──既存事業の“慣性”に負けない組織作り

後編

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 前回は、INNOSIGHT社が発表した「Transformation20」をもとに、企業変革の際に生じる危機や、成功のためのポイントについて解説しました。今回は、これから実際に企業でトランスフォーメーションを実行していくための要素をご紹介していきます。

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Transformation20選出企業にみる企業変革2つのパターン

 いきなりの寄り道で恐縮ですが、まずこのグラフをご覧ください。

上場年別での市場変更した企業の割合(東証)

 これは、2015年以降に上場した企業を上場年別に整理したグラフです。5年前の2015年に上場した企業のうち、およそ半分が市場昇格にいたっていないことがわかります。これには様々な背景があるかもしれませんが、上場後に成長が鈍化しているのも要因の1つだと考えられます。変化の激しい時代において、上場後も高い成長を維持することは簡単ではないのです。

 少し前ではリーマンショック、直近では2019年の消費税増税や、2020年に入ってからのコロナ禍のような社会経済の変動によっても、企業の状況は大きく変わります。そこでうまく変化に対応できなければ、成長が鈍化するだけでなく、一気に淘汰されてしまう可能性すらあります。しかし、変化に対応した企業変革を実行できれば、厳しい情勢の中でも成長を続けることは可能です。

 「Transformation20」で挙げられている企業をみてみると、変革は以下の2パターンあることがわかります。

  • 火事場の馬鹿力を発揮する
  • 環境の変化を先回りする

 1つ目の「火事場の馬鹿力」は、本業になんらかの危機が生じ、他の事業スタイルを検討しなくてはならなかったパターンです。

 Transformation20の中では、天然ガスの価格急落によって財政難に陥ったØrstedや、写真フィルムがデジタル化で激減した富士フイルムなどはこちらのパターンだといえるでしょう。

 また、競合他社との死闘を経て業態を転換したNetflixも、このパターンに当てはまります。店舗型が一般的だったレンタルDVD市場で、Netflixはオンライン経由での宅配で躍進しました。しかし、店舗レンタル老舗のブロックバスター社の反撃によって大打撃を受けます。「トータル・アクセス」と呼ばれたブロックバスターの新サービスは、オンラインで借りたDVDを店舗でも返却でき、さらにその場でDVDを無料で借りられるもので、オンラインの品揃えと店舗の利便性を兼ね備えたものでした。このサービスの影響は非常に大きく、それまで順調に成長してきたNetflixは契約者を奪われてしまい、収益・利益・契約者数の予想の下方修正を余儀なくされ、株価も急落してしまいます。

 窮地に立たされたNetflixは、インターネットストリーミングでの映像配信のビジネスへと参入します。2007年当時、ブロードバンドも普及しきっておらず、映像コンテンツのダウンロードはまだ一般的ではありませんでした。多くの人々が懐疑的に思ったストリーミングへの参入でしたが、この大胆な業態転換が結果的にNetflixを動画配信の覇者へと押し上げていったのです。

 危機的状況に追い込まれたことによって変革に挑戦する「火事場の馬鹿力」パターンは、過去にさかのぼると、1990年代前半に瀕死の危機に陥ったIBMにも当てはまります。コンピューター市場が変わったことで窮地に立たされた“巨象”IBMは、メインフレーム販売からソリューション提供に転換することで復活しました。また、国際競争にさらされて危機に陥ったGEを、製造業だけでなく金融業などへと展開させることで救ったジャック・ウェルチの例もこちらに当てはまるでしょう。

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この記事の著者

塚原 悠平(ツカハラ ユウヘイ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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