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リーダーが「未来から現在を展望する」ための指南書──ニューノーマルと破壊的イノベーションの共通点とは

『Lead from the Future: How to Turn Visionary Thinking Into Breakthrough Growth』

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 『イノベーションのジレンマ』で有名なクレイトン・クリステンセン氏が今年1月に亡くなられた。クリステンセン氏は「破壊的イノベーション」や「ジョブ理論」などの理論だけでなく、これらの理論を実践に移すイノサイト社も遺したことはBiz/zineでもたびたびご紹介してきた通りである。そのイノサイトの共同創業者であるマーク・ジョンソン氏は、実践家として『イノベーションへの解 実践編』『ホワイトスペース戦略』『Reinvent Your Business Model』(日本語未翻訳)などの“イノベーション実務”的な書籍を記してきたことで知られているが、最新刊はどうだろうか。『Lead from the Future』の内容を見ていきたい。

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「ニューノーマル」と「破壊的イノベーション」の共通点

 『ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ』のマーク・ジョンソンが新刊を出したとツイッターで聞いて、私はすぐにアマゾンで電子書籍の予約を行った。ツイッターで新刊の情報を入手し、店に行かずとも予約を1タップで行い、洋書を発売日に入手し読み始めることができた。読みながら、ところどころ知らない単語があれば、その言葉をタップすれば辞書の定義がポップアップしてくる。

 このような現在を10年前に想像できただろうか? 10年前に想像できていたら、私たちの歩んできていた道筋は変わっていただろうか? 会社は変わっていたのだろうか?

 新型コロナウイルス感染症について、専門家による感染症そのものへの警鐘はこの感染症の発生前から存在していたし、SARSの経験知もあった。数カ月の猶予とはなるが、感染拡大が最初に起きた中国の情報も非常に役立つものだったはずだ。

 ウイルスの種類やそこから発生する症状までは特定できないものの、新型の感染症が世界的に蔓延するリスクは不可避であることを多くの人たち、特に国家のリーダーたちは「知って」はいたのだ。

 「国家」を「企業」に読み替え、「新型感染症」を「破壊的イノベーション」と読み替えてみよう。すると、現在多くの企業が取り組んでいたり、成果が出ずに悩んでいたり、あるいは取り組みができずに悩んでいたりする事柄は、以下の論点にまとめることができる。

  • 未来に登場する破壊的技術(新たな病原体)の予測が立てにくい
  • 破壊的技術による事業環境の変化は不確実性が高い
  • 不確実性の高い未来についての対策立案は困難
  • 計画のない対策は実行できない

“現在からの未来展望”か、“未来からの現在展望”か

 今回紹介する『Lead from the Future』は、破壊的イノベーションが必ず起きることを前提にした時代の経営指南書である。実は、本書で紹介されている方法論は、私たちINDEE Japanが「フューチャーバック(Future-Back)」と呼び実践してきたものである。このネーミングは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を彷彿とさせるが、映画同様、未来が鮮明に見えれば、今やるべきことも鮮明になるという意味では同じである。

 フューチャーバックの対義語として、本書で使われているのは「プレゼントフォワード(Present-Forward)」である。日本語に訳せば、プレゼントフォワードは「現在からの未来展望」である。他方のフューチャーバックを訳せば「未来視座からの現在展望」となる。

 この二つの違いを具体的に見ていく前に、著者のマーク・ジョンソンについて簡単に紹介しよう。というのも、本書は読めば読むほど、マーク・ジョンソンがクリステンセンの薫陶を受けてきたことを感じる一冊であるからだ。

 マーク・ジョンソンは、イノサイトの共同創業者としてクリステンセンと破壊的イノベーションの理論を実践に移してきた第一人者である。イノサイト創業前は、海軍将校でもあった氏は、さまざまな組織のリーダーシップに触れてきた。そして、非常に優れた企業の優れたリーダーたちが、まさに「イノベーターのジレンマ」としか表現できない、長期的な成長と短期的な生存を両立する難しさに直面する姿を実際に見てきた。その経験を踏まえた言葉が多く記されていることがわかる一冊が『Lead from the Future』である。

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なぜ大手タイヤ会社は「宇宙船の構想」という“認知バイアスの誤謬”に陥ったのか

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

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