サービスデザインとサーキュラーエコノミーの“相性”
大山 貴子氏(株式会社fog代表、以下敬称略):以前に長谷川さんはデザイン誌「AXIS」の連載「Business & Design」で、循環型ビジネスとサービスデザインについて書いていらっしゃいましたよね。対談の前提として、サービスデザインと循環型ビジネスの関係をお伺いしたいです。
長谷川 敦士氏(株式会社コンセント 代表取締役社長、以下敬称略):サービスデザインは顧客体験を基軸に、ビジネスの仕組み全体を捉え直すためのツールです。あらかじめ決めたサービスの枠内を最適化するのではなく、調達や顧客のタッチポイント、裏側のオペレーション等を含め、全体最適視点で見直すことを可能とします。そのため、ビジネスを循環型の仕組みにしたいときに使う思考ツールとして、サービスデザインが向いているんですよね。
それが大前提ではあるのですが、ちょうど昨年のサービスデザイングローバルカンファレンス(Service Design Global Conference 2019)で、サービスデザイナーは気候変動に向き合うべきだという提言がありました。というのは、サービスデザイナーのスキルやサービスデザインのプロセスが、以下の点でサーキュラーエコノミーに向いているからです。
- システム思考:システムのレベルで思考し、デザインする術を持っている
- 参加型デザイン:公平性(equity)を担保しながらスケールさせる術を持っている
- 行動変容:(ある集団の)ふるまいの変容や文化の変革を促す術を持っている
- 未来志向:目指すべき未来のために、ビジュアライズやプロトタイプする術を持っている
上記は、サーキュラーエコノミーを前提にしていなくてもサービスデザインでは行っていることなのですが、サービスデザインをツールとして使うと、サーキュラーエコノミーにさらに向かっていきやすいんです。
大山:だからデザインコンサル企業のIDEOなどが、サーキュラーエコノミーを推進する英国エレン・マッカーサー財団と、The Circular Design Guideを刊行したのですね。