リサーチ自体が問題なのではなく、アイデアの素にならないことが課題
本来であれば発想の起点となるはずの生活者リサーチ。それがアイデア発想やデザインにつながらない・使えないという問題に対して、マーケティング・リサーチャー、デザイナーなどにおける実際の現場の声はどうなのか。
リサーチャーA:生活者リサーチをおこなったが、ありきたりなアイデアしか出ないと言われることが多く困っている。生活者視点でのアイデアなので、間違ってはいないはずなのだが……。
デザイナーX:リサーチャーによる生活者リサーチは、そのままでは発想やデザインには使えない。例えば、自分で街を歩いたり、ユーザーを見たりしているほうがアイデアは浮かぶ。そういうインスピレーションがわかない。
このような状況において、「生活者リサーチ自体が不要なのでは?」というリサーチ不要論も言われる。しかし、ここで注意したいことは、デザイナーも、生活者リサーチ自体が不要と言っているわけではないということである。実際、彼らもデザインを考えたり発想を得るにあたって、フィールドワークに出て人のリアルな状況・行動を観察したり、必要なインタビューを実施したり、リサーチをおこなっている。生活者リサーチ自体が不要なのではなく、現状、多くの生活者リサーチ結果が、発想やデザイン(対象物のあり方の再構築・再設計)の素材として使えるものになっていない、ということがどうやら問題の本質のようだ。
では、発想やデザインの素材として使える、つまり、アイデアを生み出すのに必要な情報を生成するには、どうすればよいのか。今回は、データ収集におけるポイントを見ていくこととする。