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GoogleやUber、Walmartなども活用する行動科学の知見を応用した「行動変容デザイン」とは

登壇者:慶應義塾大学 経済学部 教授 武山政直氏【前編】

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 7月10日、人間中心設計推進機構(HCD-Net)主催で、心理学と行動経済学をデザインに活用する『行動を変えるデザイン』(Stephen Wendel 著/オライリー・ジャパン 刊)の出版記念講演が開催された。本書を監訳した慶應義塾大学 経済学部 教授 武山政直氏、翻訳を担当したリクルートグループの3名のデザイナー(相島雅樹氏、反中望氏、松村草也氏)が登壇した。本稿では、行動科学の知見をプロダクトデザインに応用する「行動を変えるデザイン」とは何かを解説した武山政直氏の講演を中心に、書籍の内容も参照しながら、本書の核となる理論や周辺理論も補足してお届けする。

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Google、Airbnb、Uber、Walmartも活用する行動科学のデザインへの応用とは

 本書の監訳を担当した慶應義塾大学 経済学部 教授 武山政直氏は、「行動を変えるデザイン」に関して、まず現状と背景、方法論と事例、実践における課題を語った。

 行動科学の知見を活用したデザインは、Google、Airbnb、Uber、Walmartなど、業種も多岐にわたり活用されており、行動科学の知見を有する専門人材の採用も積極的に行われている。世界的なサービスデザインカンファレンスであるSDN(サービス・デザイン・ネットワーク)でも、近年は「行動科学のサービスデザインへの応用」をテーマとした講演が増え、注目が集まっているのだという。

 では、なぜ行動科学の知見をサービスデザインに活用することに注目が集まっているのだろうか。武山氏は、その背景を3つに集約して説明する。

 1つ目は「行動変容への社会的関心の高まり」だ。多くの社会課題はある一定地域に閉じたものではなく、グローバルで共有されるものが多い。例示するまでもなく、コロナ禍での生活変容などが代表例として挙げられるだろう。そのような社会課題の解決には、人々の行動変容が密接に結びついており、その行動変容をデザインすることとサービスデザインの相性がいいのだ。

 2つ目は「行動科学」の知見がビジネスシーンで活用できる知識として社会的に共有されていること。行動科学は、社会心理学、健康心理学、行動経済学などから構成され、特にノーベル経済学賞で注目を集めた「行動経済学」とその主要理論であるナッジに関しては、多くのビジネスパーソンが知るところだろう。適用範囲は、公共政策などに限らず、プロダクト開発やデザインへ応用される例が増えている。

 そして、3つ目は「テクノロジーの進化」であり、データ収集、解析、コミュニケーション、効果測定がしやすくなったことが要因だという。

 武山氏は「行動を変えるデザイン」には主に2つの方向性があると指摘する。

 1つは、プロダクトのために行動科学の知見を採用し応用するというもの。既存のプロダクトに、行動変容の知見を取り入れることでユーサーに良質な体験を提供するためのものだ。もう1つは、行動変容そのものを目的としてプロダクトをデザインすること。特に、後者が最近増えているのだという。データを取得するセンシング技術の進化などにより、行動に対する効果的なフィードバックやフィードフォワードが可能になったことも理由となっている。

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