日本の製造業のいまだ高い国際競争力、低下の一途を辿る労働生産性
1962年創業のミスミは、機械部品の製造販売を行う企業グループ。製造業を下支えする社会インフラを担う存在であり、業界で初めてカタログ販売を始めたことでも知られる。取り扱う部品の種類は約3,100万点。バリエーションの数は800垓(がい)を数えるという。
吉田氏はNTT、日本オラクルを経て同社に入社。製造業のDXを推進するものづくりプラットフォーム『meviy』を立ち上げた。『meviy』立ち上げの背景にある製造業の課題を次のように整理する。
「製造業はGDPの2割を占める日本の基幹産業。世界シェアの60%以上を占める商品は270個あります。これは米国の約2倍、中国の6倍近い数字であり、国際競争力は非常に高い。しかし、問題は労働生産性です。2000年時点で世界一だった日本の製造業の労働生産性はその後、凋落の一途を辿っています。2017年にはOECD加盟国で半分より下まで落ちています」
出典:『2019年版ものづくり白書』/経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省による共同執筆
新型コロナウイルスや米中貿易摩擦など、外部環境が激しく変化する中、数ある産業で大きくその影響を受けている1つが製造業、特に中小企業だと吉田氏は言う。だが、こうした外部環境の変化は脅威でもあるが、機会でもある。米国におけるEコマースの普及率は、コロナ禍の直近3カ月で、過去10年分に該当する成長を遂げた。
従来のビジネスには、あらかじめ様々なケースを想定し、準備し、組み立てていく「予測型」が多かったが、VUCAの時代にこれまでのような予測は立たない。脅威や機会をいかに早く察知できるか、それに合わせてアセットを再結集し、競争優位性を作っていけるか、持続的にそれを行うために組織を絶えずトランスフォームしていけるかが問われていると吉田氏は言う。
「巷で騒がれるDXもこうした文脈で理解できる」。紙中心のアナログなビジネスプロセスから脱却し、デジタル化していくことは不可欠となっている。