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経営企画のためのアライアンス入門

成功する戦略的アライアンスにある自社に不足する資源の明確化──5つの資源別、成功パターンとは?

第2回

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 連載第1回である前回は、戦略的アライアンスが求められている背景を解説しながら、アライアンスとは何か、その課題と難しさ、推進プロセスの概要を解説した。今回は、前回概要を解説した「戦略的アライアンス」に必要な推進プロセスの第1段階である「戦略策定」のうち、前半に該当するプロセスを解説する。獲得したい資源別(人材・組織/技術/生産/販売/ブランド)に戦略的アライアンスのパターンを解説する。

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“手段が目的化”したオープンイノベーションはむしろ阻害要因である

 かねてより「オープンイノベーション」の重要性が強調されていますが、社外のリソースを活用するという意味において、オープンイノベーションはアライアンスそのものであるとも言えます。そして第一回で説明したとおり、現代においては「10年分の進化」という急激な変化に対応して顧客のために価値を提供し続けるために、アライアンスを駆使することが求められています。

 ここで重要なのは、アライアンスはあくまでも手段であるということです。アライアンスを通じて何を手に入れたいのか、そして最終的に何を実現したいのかをはっきりさせなければなりません。R&Dのアウトソーシングなのか、不足する経営リソースを補完するためなのか、飛び地の事業への足がかりを獲得するためなのか、各社が有するナレッジを共有・融合させるためなのか。このように、想定し得るアライアンスの目的はさまざまです。そして、何が目的かによって、最適なアライアンスのストラクチャーや条件も変わってきます。

戦略的アライアンス

 しかし、大手企業ですらこの点の検討が抜け落ちており、スタートアップとのアライアンスを実施すること自体が目的となってしまうケースもあります。また、事業提携やジョイントベンチャーなどは言葉としてキャッチーであるため、企業活動の積極性を対外的に打ち出すという側面からも、何かしらの形で「組む」こと自体が目的となってしまうようなケースもあります。その場合、必ずしも適切とは言えないアライアンスを実施することになり、結果的に自社の事業の成長を阻害する原因にもなりかねません。また、アライアンスではなく、例えば必要な経営資源を自社で調達・獲得することが定めた戦略の遂行に最適であるケースも少なくありませんが、その際にはアライアンスはむしろ遠回りになり得ます。

 重要なのは、アライアンスの検討を行う前に、中長期的な経営戦略を描き、その戦略を実現するために必要でありかつ不足している経営資源を、事前に具体的に特定しておくことです。

戦略実現のために不足する「経営資源」は何かを明確にする

戦略的アライアンス

 その際に意識すべき点として、次の3つがあります。第1に、自社で完結しなければならない領域は何か明確に定義することです。他社からアライアンス等を通じて借りるのではなく、自社独自に確保しなければならないリソースを特定しなければなりません。これは、自社のコアコンピタンスと表裏一体です。自社が持続的に競争優位性を維持するためには、コアコンピタンスを守り、そしてそれを強化し続ける必要があります。この部分を他社に依存してしまってはなりません。

 第2に、アライアンス相手に何をGIVEすることができるかを意識することです。換言すれば、アライアンス先を、単なる情報や技術の吸い上げ対象として見てはならないということです。公正取引委員会が公表した「スタートアップの取引慣行に関する実態調査について」というレポートが話題となっていますが、特に大手企業が中小や新興企業を相手に、自社の優位な立場を利用して不公平な取引条件を強要することは、中長期的には自社の立場を弱めることになりかねません。アライアンスはあくまでも相互補完関係に基づくものです。自社に不足している経営資源を具体的に特定するだけでなく、自社から相手に提供できる経営資源が何かも意識する必要があります。

 そして第3に、何をやらないかを明確にすることです。アライアンスを活用すれば外部から経営資源を調達することもできるため、「何を行わないか」の判断が甘くなってしまうことがあります。しかし、アライアンスを成功させるには自社の経営資源も多分に活用するため、やはり何かに注力するためには、何かを捨てるというトレードオフを受け入れなければなりません。

 以降では、獲得したい・すべき資源別に戦略的アライアンスのパターンを解説します。

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この記事の著者

野本 遼平(ノモト リョウヘイ)

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