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「大企業による新規事業」のリアル

なぜミスミは製造業に変革を起こす新規事業を伸ばせているのか──吉田氏が語る、失敗を積み重ねた先の成功

第14回 ゲスト:株式会社ミスミグループ本社 吉田 光伸氏

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 新規事業開発に携わる方へのインタビューを通じて、大企業内の新規事業開発における美学を探る本シリーズ。今回のゲストは、モノづくり産業の裏方として機械部品の製造販売を行い、グローバル顧客基盤32万社の製造現場を支えるミスミグループ本社の吉田 光伸氏です。  吉田氏はミスミグループ内で新規事業として「meviy」(メヴィー)を立ち上げ、従来は大量の図面と長時間を要していたモノづくり企業のサプライチェーンに改革をもたらしています。変化を起こしにくいといわれる製造業界で、なぜこういった新規事業を興すことができたのでしょうか。本気ファクトリー株式会社代表取締役の畠山 和也氏が聞きました。

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大企業ならではの新規事業の進め方

畠山和也氏(本気ファクトリー株式会社代表取締役、以下敬称略):ミスミさんは、それまで図面を介して発注されていた機械部品の製造販売を、カタログで行うことで大きな成長をした企業だと聞いています。カタログでは800垓(1兆の800億倍)ものバリエーションが注文できるそうですね。製造業全体では改善に改善を重ねるのは得意でも、イノベーションは起こしにくいというイメージがありますが、ミスミさんは事業創造の社風があるのでしょうね。

 私は企業の新規事業開発支援をやっているのですが、新規事業を大企業内で立ち上げる場合、経験のない人がアサインされてから1、2年のうちに結果を出さなければならないケースが多いです。その期間に事業にならないからと失敗の烙印を押されて取りやめになり、そこで得た知見がどこにも活きないことがよくあります。ミスミが3D設計データによる即時見積もり・即日出荷を実現するWebサービス「meviy」を新規事業としてうまく立ち上げられたのは、吉田さんの経歴にも関係があるのかと思うのですがいかがでしょうか。

吉田光伸氏(株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 兼 ID企業体社長):一般的に、新規事業に始めて携わって成功できる確率は限りなく低いとはいわれますね。私の場合はNTTやオラクルでの経験がmeviyの立ち上げにも大きく役立っています。

 NTTでは、黎明期のインターネットを活用する新規事業に多数携わりました。今でいうSaaSのようなビジネスモデルを考えたのですが、時代を先取りしすぎたのか、残念ながらほとんど失敗に終わっています。その後、オラクルでも、新規事業の立ち上げを多数経験させてもらいました。大手企業はスタートアップとは違ってヒト・モノ・カネといったアセットが社内に揃っているため、新規事業立ち上げには有利な点が多くあります。実際、meviyもミスミの既存顧客31.8万社の顧客基盤が存在するため事業の立ち上がりが非常にスムーズにいきました。

畠山:そうなんです。ただ、経営者目線で合理的に考えると、短期的には新規事業はリスクの方が大きいということもあり、大企業での新規事業はスタートアップとは別の難しさがあると思います。

吉田:新規事業を妨げる力が社内で働く初期段階は、「敵はウチにあり」という状態に陥ってしまうことがあります。既存事業とは発想が違うので、既存事業から切り離すことも大切だと考えます。昔は「ヤミ研」なんて言葉がありましたが、ある程度成果が出るまでは水面下で進めた方がよい結果が出たりしますよね。それから、同じ志の仲間を作るのも重要です。トップの理解・後押しを得ることも大企業での新規事業としては極めて重要な活動かと思います。

畠山:既存事業と離すことと仲間を作ること、これらは本当に非常に重要ですよね。顧客のサプライチェーンのど真ん中に切り込んでいくmeviyは、他にも成功の秘訣がありそうです。サービスの詳細と、それが実現できた理由を教えてください。

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この記事の著者

フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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