パネルディスカッションには第一部のセミナーに登壇したブランドン・ルーマン、小杉俊哉、古川将寛の3氏に加えて、株式会社カインズ執行役員CHROであり日本CHRO協会理事の西田政之氏、Attuned創業者 ケイシー・ウォール氏も参加。視聴者からの質問も募りながら、それぞれの立場からビジネス現場におけるナッジ活用について議論した。モデレーターはAttuned 飯田蔵土氏が務めた。(以降、敬称略)
日本企業にナッジを適用していくことは可能か
飯田蔵土:最初のテーマは、「日本企業にナッジを適用していくことは可能か」です。まずはブランドンさん、西田さんから、日本企業における可能性を伺えますか。
ブランドン・ルーマン:それは可能だと思います。そのためのヒントとして、ここではひとつの事例を紹介したいと思います。
新型コロナウイルスが蔓延し、米国でもWork from Home(在宅勤務)が盛んになっています。これまでは通勤が仕事をする上で最もストレスフルなものとして挙げられることが多々ありました。たとえば通勤に時間がかかると、会社や仕事に対するエンゲージメントが下がるといったことが起きていたのです。
この課題への解決策としてある企業が取り組んだのは、簡単なテキストメッセージを社員に向けて送ることでした。その日オフィスに来るとどんな仕事ができるか、どんな風にやるかなどその日の計画を伝えたのです。そうすると、通勤すること自体は依然として変わらないのですが、オフィスに来ることの意味が社員の中に芽生え、モチベーションが上がるという結果が出ました。通勤へのネガティブな気持ちがなくなり、エンゲージメントが上がるという結果が出ています。
行ったのはテキストメッセージを送るという本当にシンプルなことだけ。それでも優れた効果があったということです。
西田政之:企業におけるナッジの活用には「事業向け」と「組織内向け」の2つがあると思います。組織内に関して話しますと、現在、組織人材マネジメントの潮流として「個の時代」「風の時代」になってきています。一人ひとりの尊厳を大切にしながら、社員にどう向き合い、寄り添っていくかが重要になってきているということです。
それを担保するための手法として「1on1ミーティング」を取り入れる企業が増えてきているのだと思うのですが、その1on1もいかに効果的にやるかが肝ですよね。ナッジはその解決策のひとつとして注目されているのではないかと思います。
一方で先ほどのJTさんのお話にもありましたが、研修の効果というのは我々のような人事パーソンにとって永遠の課題です。やりっぱなしになって実務とつながらないという問題がやはりある。その解決のためにナッジを使ってWillを問うというJTさんの実践は素晴らしいなと思いました。