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「カーボンニュートラル」とは何か

金融業界のカーボンニュートラル最前線──「“数十年後の世界”を顧客とともに創り上げる」金融機関の挑戦

Sansan Innovation Project 2021 レポート

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 日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言にはじまり、脱炭素に向けた様々な目標が定められる中、今年6月に発表されたコーポレートガバナンス・コードでは、2022年4月の市場区分再編にともない創設されるプライム市場への参加企業に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)あるいはそれと同等の枠組みでの情報開示を求めている。
 これらに端を発するTCFD内外の情勢の変化を受け、TCFDメンバーである東京海上ホールディングス株式会社/東京海上日動火災保険株式会社 フェロー・国際機関対応 長村 政明氏と株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役員 リスク統括部長 安田 裕司氏が対談した。今後の金融機関による投融資先の気候関連対応の動きや、金融機関との対話による企業の脱炭素へ向けた移行促進、そのためのイノベーション促進などを展望し、脱炭素社会に向けた金融機関と企業双方に求められるアクションなどに関して考察。金融機関はもとより、企業サイドで脱炭素社会への対応に携わる人々へ1つの羅針盤を提供する。なお、本対談のモデレーターを務めるのはモルガンスタンレーMUFG証券株式会社 顧問/Sansan株式会社 シニアアドバイザーの安井 肇氏。

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投資家が金融機関に「気候関連の財務インパクト」を求める時代

安井 肇氏(以下敬称略):企業の気候変動への取り組みや影響に関連する、財務情報の開示を促すTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、気候変動をもたらすリスクのほか、資源の効率性、エネルギー源の多様化などに対応した新しい商品・サービスの開発など、リスクとビジネス機会の両方を踏まえて、どういった財務的なインパクトがあるのかという枠組みの下で出来上がっています。今回、気候関連の情報開示について、銀行や証券会社、保険会社、これらを監督する機関、そして、それらを束ねている組織であるFSB(金融安定理事会)の下にこのタスクフォースが作られたということで、非常に注目されているのです。

【表1】:画像クリックで拡大
【表1】:画像クリックで拡大

 これを取り巻く動きとして、欧州ではTCFDの提言に沿った組織の情報開示が義務化されようとしているほか、日本でも、本年6月からスタートしているコーポレートガバナンス・コードの再改訂において、「上場会社はサステナビリティに関する取り組みについて開示すべき」という日本取引所グループの声明が発表されました。特に、2022年4月からスタートするプライム市場に参加するためには、TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示が必要であると明言されています。

 さらに、8月31日に公表された金融行政方針の中では、「金融機関においては、投融資先が気候変動に対応できるよう積極的に関与し、ノウハウを提供するなどの支援を行うことが期待されている[1]」と述べられており、金融機関を起点に様々な業界、企業が気候関連の課題に対応していくことが期待されているのです。以上を踏まえて、まずはTCFDメンバーである長村さんから、最新の情勢についてお話をいただければと思います。

長村 政明氏(以下敬称略):既にニュージーランドや英国などでは、TCFDを情報の強制開示のためのツールとして使おうとする動きが出てきており、日本でも先ほど安井氏が述べたコーポレートガバナンス・コードの改訂や、日本銀行が投融資先のバックファイナンス実施を宣言するなど、様々な変化が見られています。また、FSBが7月に出したロードマップ[2]によれば、金融市場の透明性/説明責任向上に取り組む組織であるIFRS財団が、サステナビリティ開示基準における開発の動きを歓迎すると発表しました。

 これらをはじめとする様々な動向や期待を受け、TCFDにおいて、より柔軟な開示が可能となるように従来の指標を見直そうという動きに至ったのです。6~7月にかけて市中協議を行い、そこで出た案を再度修正したものが、10月に発表される予定となっています。

【表2】:画像クリックで拡大
【表2】:画像クリックで拡大

 まず協議をする中で、投資家は【表2】の右側に示されている「気候関連の財務インパクト」に関心を寄せていることが判明しました。つまり、気候関連リスクやビジネス機会が、財務パフォーマンスや財務ポジションにどのようなインパクトを与えるのかを知りたがっているのです。

 財務パフォーマンスというのは、たとえば「気候関連のビジネス機会が、どの程度売上高にインパクトを与えるのか」「カーボンプライシングの導入が及ぼす影響とは」「自然災害によって操業を停止した場合の支出をどう見るか」などといった情報を指します。

 財務ポジションにおいては、主にバランスシートへの影響に関心が集まっており、「物理的/移行リスクに備えるために、どのような高資産を保有しているか」「気候関連リスクやビジネス機会に考慮した期待ポートフォリオが一体どうなっているか」などといった情報が求められています。

 ただ、これらの情報を咄嗟に要求されても、すべてを開示することは簡単ではありません。そこで、これらを導くために欠かせない情報として、【表2】の左側に示されているような「気候関連指標」というものがあります。それ自体は財務情報ではありませんが、気候関連リスクやビジネス機会のレベルを示す重要な定量情報となるでしょう。


[1]金融庁「2021事務年度 金融行政方針:コロナを乗り越え、活力ある経済社会を実現する金融システムの構築へ」(2021年8月)

[2]日本銀行「気候関連金融リスクに対処するためのFSBロードマップ(仮訳)」(「金融安定理事会による気候関連金融リスクへの取組みに係る文書の公表について」、2021年7月9日)

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この記事の著者

名須川 楓太(Biz/Zine編集部)(ナスカワ フウタ)

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