未来予測が難しいプロジェクトのための“新たなメソッド”
周囲を取り巻く状況が常に変化する中で、未来予測が困難なプロジェクトが増えています。それらをスムーズに進めていくにはどうしたらいいのでしょうか。前回は、ホラクラシーやスクラムの例を挙げ、これからのプロジェクト推進において鍵となるのは「定例ミーティング」の運用であるとお伝えしました。本連載で言及する“ミーティング”は、組織が主体となって行う報告や共有がメインの会議ではなく、あくまでも個々のプロジェクトに紐づいており、それを推進するために行われるものと捉えてください。
ミーティングでプロジェクトの理想の状態を再確認し、現状から理想の状態になるための次の行動をチーム全員で決定する。それが、私たちが今実践しながら試行錯誤を重ねている、「みんなで進める」新たなプロジェクト推進メソッド、「Project Sprint」のコアとなる考え方です。
「Project Sprint」は、新規事業開発のように先の予測を立てることが難しく、外部環境の変化に柔軟に対応しなければならないプロジェクトで特に有効な方法です。この方法論を実践し、一人ひとりのプロジェクトメンバーが自律的に行動できる状態を作るためには、プロジェクトやチームの「理想の状態」が明確になっており、その内容に全員が納得できていることが大前提となります。
同じ目的・目標に全員で向かいつつ、一人ひとりは自律的な行動をする。2つの要素を同じチーム内で両立するためには、何が必要となるのでしょうか。
近年、組織論の中でも同様の問いが取り上げられています。メンバー全員がリーダーシップを発揮できることを前提とする「シェアド・リーダーシップ」を提唱する石川淳氏は、著書『シェアド・リーダーシップ―チーム全員の影響力が職場を強くする』の中で、人が何か一つの目標に向かって協調・連携しながら活動している状態を“統合”、個々が自らの目標に向かい自律的に動く状態を“分化”と呼び、両者を達成するための要素を以下の図のように整理しています。
組織内で“統合”と“分化”を両立するには、上図のようにそれぞれ異なる要素を満たす必要があります。これは、組織をプロジェクトチームに置き換えても同じことがいえるでしょう。
様々な要素の中でも特に重要視しているのが、統合を促進する「目標の共有化」で、プロジェクトそのものの目的を明確化すると共に、マイルストーンを設定するケースが多く見られます。マイルストーンとは、プロジェクトの目的を達成するために、いつまでにどのような状態に達していたら良いかという「理想の状態」を、2ヵ月程度のスパンで設定する中間目標のようなものです。その内容は、プロジェクトによって異なりますが、たとえば以下のような項目について具体的に提示します。
- 必要となる成果物(資料など)のリスト
- 達成したい数値目標
- その他、定性的な目標(チームの状態など)
こうした目的や目標をチームメンバー全員がしっかり認識した上でプロジェクトに参加する状態を作ることで、個々の自律的な行動が生まれやすい環境が整います。ただマイルストーンの設定はあくまでも一つの手段にすぎません。繰り返しになりますが最も重要なのは、プロジェクトにおける「理想の状態」が明確化されており、チーム全員がそれに納得できていることです。たとえば、プロジェクトの初期段階にメンバーが目標にしっくり来ていない(目標の共有化ができていない)場合、一定期間リーダーが引っ張るフェーズが必要となるケースも多々あります。
プロジェクトを進行していく中で周囲の状況が変化し、目的や理想の状態が曖昧になってしまったときも、一時的にリーダーが先頭に立ち目標の共通化を進めます。基本的には、その繰り返しだと考えてください。