ゼロから立ち上げた金融デザインチーム
根岸慶氏(以下、敬称略):まずは浅沼さんのこれまでのキャリアから聞かせてください。
浅沼尚氏(以下、敬称略):約20年にわたり、デザイン業務に携わってきました。キャリアのスタートは、家電メーカーのインダストリアルデザイナーとしてIT機器や家電のデザインをするところからでした。その後、UXコンサルティングの会社へ転職し、航空、小売、保険、金融といった幅広い業界でUXのコンサルティングに従事しました。
現在は、金融分野でCXO(Chief Experience Officer)として体験デザインを推進する立場にあります。
根岸:Japan Digital Design(以下、JDD)についてもご紹介いただけますか。
浅沼:MUFGの戦略子会社で、前身はMUFGの内部組織「Innovation Lab」です。新しい金融サービスの創出に向けてチャレンジする組織として2016年2月に立ち上げられた「Innovation Lab」ですが、1年間試行錯誤していく中で様々な課題に直面したことで、新たに会社をつくり、MUFGの外の組織として進めたほうがいいという話になりました。こうして2017年10月に設立されたのがJDDです。
JDDは当初、MUFG内のプロジェクトと一定の距離を保ち、自社サービスとして新たな金融サービスを立ち上げることを事業の中心に据えていました。2021年4月からは、JDDの持つアセットをうまく活用しながらMUFG内のサービスやプロダクトを共創することにシフトし、グループ全体の新しいサービスの創出やDX推進に貢献するという方針に変わっています。
設立当初からのミッションは「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」こと。ここでの「新しいあたりまえ」とは、データと顧客価値の循環を意味します。データ分析に基づいて新しい金融サービスを創出し、それをユーザーに使ってもらうことで新しいデータを得て、そのデータを活用してさらに既存サービスに新しい機能を追加したり、新たなサービス創出につなげたり、などの良循環をつくるのが我々の目指すところです。
根岸:JDDの従業員は専門人材が多くなりますよね。人材の採用はMUFG内からか、もしくは外部からでしょうか。
浅沼:従業員の7割は中途採用で、ビジネス開発、データサイエンティスト、エンジニア、デザイナーなど幅広い分野の専門人材が在籍しています。また、データ分析・蓄積を安全に行えるインフラも社内に備えていますので、顧客体験を設計することとデータを分析することの両方を社内で行える体制になっています。