「InsurTech」の組み込みで保険の形が大きく変わる
コロナ禍を契機に様々な業界でIT・テクノロジーの導入・活用が進んでいるが、その波は保険業界にも押し寄せてきている。保険の領域は一般的に「金融業界」に属するが、FinTech(フィンテック)の導入が早期から行われていた銀行など金融機関に比べ、保険業界ではIT化が比較的後れていた。
FinTechがファイナンスとテクノロジーの融合した造語であることに対し、保険業界ではInsurance(保険)とテクノロジーを掛け合わせて「InsurTech(インシュアテック)」という言葉が使われる。InsurTechの開発と導入が進めば、業務効率化や生産性向上だけでなく、保険商品などへテクノロジーが組み込まれることも期待できるという。
たとえば自動車保険の場合、運転履歴を記録して運転技量を数値化し、保険料に反映させることが行われ始めている。また、生命保険においては、ウェアラブル端末などの活用によって顧客の健康状態をリアルタイムで可視化し、状況に応じて保険料を変更する取り組みも試みられている。これまでも、顧客の健康状態などに合わせて異なる保険料を設定する、リスク細分型保険の仕組みは存在していた。しかし、テクノロジーの活用により、この細分化をより精緻に、そして保険期間中でも柔軟に適用することができるようになるという。
ほかにも、海外旅行中の健康状態をアプリでモニタリングしたり、救援物資をドローンで遠隔地まで届けたりする取り組みが行われている。この先、成功事例が増えてくれば、テクノロジーの活用方法によって各社のサービスに差が生まれるようになり、研究・投資も一層盛んになると本書は予想している。
保険会社にはSDGsやESGに取り組む責任がある
保険業界の大きな変化として欠かせないのが、SDGsとESG投資に関する取り組みだ。企業は社会課題解決への積極的な関与を求められているほか、環境や健康、エネルギーなどの分野で、社会課題解決につながるビジネスを創出すべく様々な活動を行っていることは皆さんもご存じだろう。
金融機関と同じく、保険会社は機関投資家として対外的に強い影響力を持っている。そのため、投資先の企業に対してESGの観点から評価を行う必要があるのだ。つまり、保険会社には、ESG投資やSDGsに関する活動に率先して取り組む責任がある。特に、保険業は信頼と信用に基づくビジネスであるため、今後もこの役割がなくなることはないはずだ。