アナロジー思考に「抽象的に考える技術」が必要不可欠なわけ
アナロジー思考とは、類似する他の物事と結びつけて新しい発想をする考え方だ。アナロジーとは日本語で「類推」のことなので、類推思考と言われることもある。
ルネサンスの三大発明の1つであるグーテンベルクの活版印刷機やヘンリー・フォードのT型フォードの組立コンベヤーラインなどの世紀の大発明は、このアナロジー思考から生まれたものである。こうしたこともあり、新しい発想をするためにアナロジー思考は必要不可欠な思考法とも言われる。
このアナロジー思考を効果的に活用するためには、よく「抽象的に考えて遠くに飛ばせ」と言われる。ここではまずこの言葉の意味を具体的に説明しよう。
以下の図を見てほしい。新しい自動車を発想するために、繋がりのある物事に発想を飛ばしてヒントを得ようとしているシーンだ。

左下から順番に見ていこう。まず、自動車を「人を乗せて四輪で動くもの」と少し抽象的に捉え、この「人を乗せて四輪で動くもの」をベースに類似性のあるものを繋げる。そうすると「トラック」や「バス」が出てくるだろう。
次に、ここから抽象度を上げて、自動車を「人を乗せてタイヤで動くもの」と捉え、これをベースに類似性のあるものを繋げる。そうすると、四輪ではないタイヤで動くものが対象になるので、たとえば二輪のタイヤで動く「バイク」が出てくるのではないだろうか。
さらに抽象度を上げて、自動車を「人を乗せて地上を動くもの」と捉え、これをベースに類似性のあるものを繋げる。そうすると、タイヤがなくても、とにかく人を乗せて地上を動くものなので、「電車」が出てくるだろう。
もうひとつ抽象度を上げて、自動車を「人を乗せて動くもの」と捉え、これをベースに類似性のあるものを繋げる。そうすると、もはや地上を移動する必要もないので、空や海を移動するものである「飛行機」や「船」も出てくるだろう。ここまで来ると、最初の「トラック」や「バス」と比較しても、だいぶ自動車から離れてきた。
このように、自動車を抽象化し続けるほど、自動車から離れた物事を繋げることができる。そして、元の対象物(今回は自動車)から離れれば離れるほど、他の人では考えられない飛んだ発想に繋がっていくのだ。
このような理由から、アナロジー思考では、発想を遠くに飛ばすために、「抽象的に考える技術」が必要だと言われている。少しイメージを掴んでいただけただろうか。
さて、抽象的に考える重要性はわかったものの、やみくもに何でもかんでも抽象化していては効率が悪いし、いい発想に結びつかない。ここでは、具体的にどのように抽象的に考えていけばいいのか、2つのポイントを解説していきたい。