TOP写真:今津美樹 氏/『バリュー・プロポジション・デザイン』共著者:イヴ・ピニュール氏
--『バリュー・プロポジション・デザイン』(以下VPD)の邦訳が発行されました。今津さんは前回の『ビジネスモデル・ジェネレーション』(以下BMG)の時から、その後の『ビジネスモデルYOU』の翻訳、『ビジネスモデル・ワークブック』など、一連のシリーズの考え方を、日本に紹介され、多くの企業向けの研修やセミナーなどをおこなってこられました。今回のVPD『バリュー・プロポジション・デザイン』をお薦めする理由についてお話ください。
今津: BMGのメソッドは、自分たちのビジネスモデルが成功するために重要な検証を的確に行うためのものです。中心となるツール“キャンバス”をベースに顧客のインサイトを迅速にくみ取ったビジネスモデルにアップデートするためには、顧客の潜在的なニーズをいかに製品やサービスに担保していくかがカギとなります。 国内外の企業、大学で、数多くの研修や講義、コンサルティングを行ってきましたが、ほとんどの企業が顧客の声に実際に耳を傾ける機会が少ないと口を揃えておっしゃいます。
--企業の事業開発や製品・サービス開発の立場の方は、意外に顧客のことがわからないということですね。
今津: 実際に顧客の課題をいかに解決するかで、ビジネスモデルの堅牢性に大きな違いがでることをご説明しています。一方、顧客のニーズと自分たちのサービスが提供するソリューションが合致しているかを検証する方法がわかりにくいといわれることも多いのです。そのような場合は、VPマップのような手順を使って、実際に個々の顧客にフォーカスして洗い出しを行うことをお勧めしています。今回出版されたVPDは、決して目新しいことを言っているわけではなく、マーケティングに携わってきた方なら考えられてきたことがほとんどだと思いますが、その検証の工程やフレームワークについてわかりやすく記載されていますので、ぜひ一度ご一読いただければと思っています。
--BMGとVPDの違いと、使い分けについてはいかがでしょうか?
今津: VPDでは、BMGのキャンバスのビルディングブロックである顧客と価値提案だけに注力して、検証確認を行うことができるようになっています。 全体のビジネスモデルは、BMGのキャンバスで俯瞰し、そこからさらに製品・サービス、顧客の課題などをより詳細に検証していくものです。ですからキャンバスとVPマップをセットでご利用されることをお勧めします。
--VPDはBMGを読んだことの無い方でも理解できるのでしょうか?
今津: 今まで、BMGを活用されてきた方はもちろん、はじめてBMGのメソッドに触れる方もぜひ納得できる内容だと思います。 また、顧客のニーズをいまひとつ実感できない場合や自分たちの思い込みで製品やソリューションを開発してはみたが、どういった顧客にアピールすればよいのかわからないといったケースでもぜひ活用いただきたいツールです。
--BMGとVPDを会社の中で導入し、浸透させるにはどうすれば良いですか?
今津: こうしたフレームワークは、検証用のツールというだけでなく、企業の共通言語として活用していくことが浸透させるうえでの重要なポイントになります。 特に、最初の基礎的な概念を共有していくまでは、意外にたいへんだと思います。 一見簡単に見えるツールも本質的な意味や検証のコツなどをうまく理解せずに共有してもフレームワークの意味がありません。 こうした課題を解決するために、翔泳社さんの公開講座や大学など、なるべく多くの方にメソッドを分かりやすく理解いただけるようにワークショップを開催したりしています。 書籍を読んだだけでは、不安だと思われた場合はぜひこうした機会もご利用いただければ幸いです。
--VPDの著者のお一人であるイヴ・ピニュール氏とはお知り合いですね。
今津: もともと、BMGのグローバルコミュニティの時代からのお付き合いです。特にコアメンバーのイヴさんやティムさんとは親しくさせていただいており、ティム・クラークとは長年の友人でもあります。 イヴさんは、キャンバスの生みの親として、私の著書にも登場いただいています。 組織のビジネスモデルを検証するBMGと、個人をビジネスモデルとして可視化するBMY(ビジネスモデルYOU)、そして今回のVPDなどを通じて、企業でのビジネスづくりの方法をみなさんにお伝えしていけたらと思っています。
関連イベント[6月11日]
『今津美樹のビジネスモデル・ジェネレーション ワークショップ』
講師:今津美樹
ビジネスモデルキャンバスを企業で活用するためのノウハウを今津美樹氏が講義
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