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カフェオレからはじまるイノベーション
オトナがますます育つ「考え方」の絵本
著者:田子學、田子裕子
出版社:翔泳社
発売日:2015年6月12日
価格:1,680円(税別)
目次
1章 情報を解きほぐす 絵本 第1話「ほぐして」
2章 情報を集める 絵本 第2話「みつけて」
3章 情報の連結 絵本 第3話「くっつける」
『カフェオレからはじまるイノベーション オトナがますます育つ「考え方」の絵本』は6月12日(金)に翔泳社から刊行された、デザイナー的思考術を養うための本です。絵本パートで読者に課題を提示し、解説パートで理解してもらう構成になっており、「デザイナー」に距離を感じている方には特に読んでいただきたい1冊です。
著者は株式会社MTDOを設立され、鳴海陶製のOSOROやナスタのnastaなど、デザインマネジメントの視点からイノベーションを起こしている田子學さんと田子裕子さん。お二人はなぜ本書を執筆されたでしょうか。また、どのような考え方で仕事をされているのでしょうか。お二人が経験し蓄積されてきた仕事術のエッセンスが盛り込まれた本書についてうかがいます。
人の意識を変えることがデザインの目標である
――よろしくお願いします。まず、デザインマネジメントを掲げられているお二人が、どういった仕事をされているのか教えていただけますでしょうか。
田子學:僕らがやっていることは、基本的にはデザインです。ただ、目に見える色や形を作るだけの狭義のデザインだけではありません。デザインというのは社会的な背景を踏まえ、計画を実行し、実りに変えていく原動力です。こうした意味でのデザインがいま必要とされていて、学際的にはデザインマネジメントと呼ばれています。僕らは企業だけに限らず、自治体とも一緒に仕事をしています。
――そうした仕事をされている中で、本書を執筆するに至った問題意識とは何だったのですか?
田子學:ある女子高で、デザインの基礎についての授業を依頼されました。本書の背景はこの授業と密接に繋がっています。
この学校は、まだ女性が働くことに対して強い抵抗があった明治時代に、女性が自立するための能力を身につけることを目的として創立された学校です。そのためいまも職業訓練としてのカラーが強く、卒業したら進学するのではなく就職することを期待されている……もっと実情的に言えば、就職以外の道はないと思い込んでいる学生が多いんです。しかし、いまはもうそういう時代ではありません。さまざまなツールや考え方もありますから、まずは自分の意識を変えていくのがとても重要です。
ですので、その授業では「あなたにはチャンスがあって、きちんとプレゼンテーションをすればついてきてくれる人はいくらでもいる、とにかく自分が変わろうよ」といった話をしました。デザインというのは本来、可能性を広げてくれるものなんです。
彼女たちは初めてデザインの考え方に触れたみたいでした。すぐ火がついた感じがしました。さらに、その場にいた編集の上野さんから「これは本にしましょう」と言われてしまったんで、二つ返事でお受けした次第です。人の意識を変えることはデザインの目標でもあるので、授業はうまくいったと思います。
田子裕子:それと、社会的にデザインが注目されていることも念頭にあります。その注目度に反して、デザインの本質自体はあまり理解されていないと感じています。「デザイン思考」という言葉はトレンドのように使われますが、どうすればデザインを有効に活用できるかはあまり分かっていただけていないようです。
よくあるのが、売上を増やさないといけない、新商品を作らないといけないといったことが課題だと思っているので、「どういう形にしようか」と商品ありきで考えていることです。売上が減っている原因には社会的な変化が背景にあるかもしれません。であれば、それにどう対応するかを考えるほうがよっぽど建設的です。デザインマネジメントという視点では、相談された課題を遡っていくところから始めます。課題を発見する能力がもっと多くの方にあれば、出発点が変わるので解決方法も違ってきます。
そのために、デザインに関する基本的なスキル、ものを見る目を養っておかないといけません。今回出版の機会をいただいたので、本書には、最低限知っておきたいデザインの基礎、ものの見方や考え方を盛り込みました。
デザイナーと接点のある人のためにも
――本書は絵本パートと解説パートで展開していきますが、どういう方に読んでもらうことを想定していたのでしょうか。
田子學:老若男女問わずですね。なぜなら、デザイン教育を受けたことのない人が大半だからです。企画のお話をいただいたとき、日本ではデザインに関する根本的な教育が足りないということを話していましたが、そうはいってもターゲットを広く捉えると読んでもらうとっかかりを作るのが難しい。では、そのとっかかりをどうしたらいいのか、と考えていきました。
僕らが発想を豊かにする瞬間の一つに、子供と一緒に絵本を読んでいるときがあります。誰でも小さい頃に読んだことがありますが、大人になると「懐かしい」という感覚だけで見てしまいがちです。改めてちゃんと読んでみると、実は非常に示唆に富んでいるんですよね。学者の研究対象にもなっています。
若い人にもデザインを知ってほしい、また、大人になっても発見することの楽しさを忘れないでいてもらいたいという気持ちから、まず絵本で興味を持ってもらい、解説でより深掘りするという形にしました。もちろんどちらから読んでも構いません。
――社会的な注目でいえば、雑誌『WIRED』でもデザイン特集が組まれていました。デザインについて基礎的なことを知っておくべきなのは、デザイナーを目指す若い人だけではいけないのではと感じています。
田子裕子:デザインに関わる方、さらにはデザイナーと接点のある方にもぜひ読んでもらいたいですね。デザイナーって実は、狭義のデザイン以外にも、もっといろいろなことができるんです。それと、自分にセンスがないと思い込んでいる方、デザインに気後れをするという方にもおすすめです。シンプルなことを積み重ねていくとデザイナー的な思考回路になっていくということを知ってもらいたいんです。