アフターコロナの小売業界が備えるべき“コロナ特需の終焉”
講演は、「コロナ禍を終え、アフターコロナの時代に突入しても消費者の行動は日々進化し続けており、すでに企業の業績に直接影響を与え始めています」という菊地 真之氏(以下、菊地氏)の言葉から始まった。
コロナ禍で社会のデジタル化が加速し、フードデリバリーやキャッシュレス決済が浸透。ほぼすべてと言っても過言ではないほどの小売企業が、新たな消費者行動への対応を迫られた。しかし、これらの行動変容が、そのままアフターコロナ時代でも継続されるわけではないと菊地氏は語る。
マッキンゼーなどをはじめとする大手コンサルティングファームが一般公開している消費者調査レポートを見ると、消費者の行動や意識はアフターコロナにおいても変化し続けている。
大きな変化の1つは、コロナ禍で拡大していた巣篭もり需要の縮小だ。顧客は、徐々に実店舗へと戻りつつある。その結果、EC事業を営む各社の流通取引総額(GMV)の伸び率も減少傾向に。たとえば、フードデリバリー事業を展開する出前館は2021年10月、半期の売上見込GMVを大幅に下方修正した。このように、コロナ特需は終焉を迎えつつあり、企業は新たな消費者行動への対策を急がなければならない。
さらなる消費者行動の進化に対応する顧客データ活用の戦略を
ここで急務となるのが、顧客データの分析と活用だ。DX時代の訪れとともに、データ活用の重要性は日本でもかなり浸透したものの、具体的な成果を生み出せている企業はまだそう多くない。
店舗回帰や巣篭もり需要の縮小、価値観の急速な変化が当たり前となった消費者のニーズに応え、業界をリードするために、顧客データをどう活用すべきか。大切なのは、「自社の『CRM(顧客関係管理)』をどのように強化するか」を考えることだと、菊地氏は語る。この考え方が、競合他社との差別化を目指す上では欠かせないのだという。
CRMの強化と言っても、単に顧客の情報をたくさん管理できればよいというわけではない。データの収集や管理はどのように行えばよいか。そして、それをどのように活用すべきか。最終的には、データ活用によって顧客体験をどう高度化したいのか。順序立てた変革のストーリーを描かなければならない。そして、その変革ストーリーを実現できる最適なマーケティング基盤を選ぶ必要がある。
しかし、そもそも成果を創出するためのデータ活用とは何をすればよいのか知っておかなければ、自社のデータ活用戦略を考えるのは難しいだろう。また、なぜマーケティング基盤の導入が必要なのか、変革のポイントを押さえておかなければならない。
そこで佐藤 洋介氏(以下、佐藤氏)は、Brazeのマーケティング基盤を活用してスピーディな施策実行・運用・改善を行い、成功を収めてきたグローバル企業2社の事例を紹介した。