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MRIのシェアエコノミーで健康起因の交通事故を防ぐ スマートスキャン濱野氏に聞く脳ドックとモビリティ

第11回 ゲスト:スマートスキャン 濱野斗百礼氏

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自由診療で敬遠されがちな脳ドックを身近にする

石野真吾氏(以下、敬称略):まずは御社の事業について簡単にご説明ください。

濱野斗百礼氏(以下、敬称略):元々、MRIやCTといった高度医療を誰でも受けられる環境を作りたいという想いからスタートした会社です。そこでまず、画像診断に特化した「メディカルチェックスタジオ」を銀座に設置し、今では新宿と大阪・梅田を加えた3施設をプロデュースするに至りました。現在特に注力しているのは、全国のMRIを備えている施設に「スマート脳ドック」という脳健診サービスの導入を広げていく活動で、これを我々は世界初の「MRIシェアリングエコノミー」と呼んでいます。

 また、最初の問診の際に受診者の許諾を取り、撮影した画像データを将来の医療に活かす活動にも取り組んでいます。将来の疾患予測など新たな技術の開発を目指すもので、画像データを元に脳の健康状態を数値化するモデルの構築などを進めています。この5年弱で脳データは10万件に達したので、これをいい形で使えればと考えています。

石野:それは凄いデータ量ですね。しかし、脳ドックというとこれまでは病院で勧められない限りは、なかなか能動的に足を運ぶものではなかったように思います。あえてこの領域にフォーカスしたのはなぜでしょうか。

濱野:前職である楽天で働いていた頃、ある医療従事者の方から「バスやタクシーの運転手を対象とする健康診断は、首から下しか診られていないのが問題だ」と聞いて、問題意識を得たのがきっかけです。脳ドックを受けようにも4~5万円はかかってしまうので、なかなか浸透しないのも当然ですよね。そこで10年ほど前から安く脳ドックを提供できないかと試行錯誤を重ね、最終的には自分でMRIを買って起業する決断をしました。

石野:私も濱野さんに出会わなければ脳ドックを受けたくても、そもそもどこに行けばいいのかわからなかったなと思います。

濱野:そうですね。脳血管疾患は日本人の死因や介護理由の上位に位置することもあり、脳ドックが世の中に必要なものであるのは間違いありません。一方で、脳ドック自体があまり浸透していないため、どこで受けられるのかもよくわからないし、高価なため避けられがちなのも事実です。そうした敷居をいかに下げるかを考えてサービスを設計し、今では脳ドックだけでなく、CTスキャンやMRIによるがん検診などまで提供するようになりました。

石野:健康診断や人間ドックは会社負担で受診する人が多いですが、自由診療で自ら脳ドックに足を運んでもらわなければならないとなると、事業の設計が難しかったのではないでしょうか。

濱野:今の日本でいうと、35歳以上の人口がおよそ8,500万人で、この層はほぼ脳ドックを経験していません。このうちの1割が関心を示してくれれば、800万人超の市場になるので、仕組みだけ作れればさほど心配ないと考えていました。それに、脳の疾患は後遺症のリスクも高いので、少子高齢化が進む今後はさらに深刻に受け止められるはずです。

 先日、公的に発表されている資料などをもとに、毎年多くの方が脳卒中で倒れている現状において、事前にスマート脳ドックを受けたらどれだけの人が助かり、どのような副次効果があるかを試算しました。そこで医療費と介護費が合計で1兆2,000億円が浮くという数字が出たのです。あくまで机上の計算ではありますが、潜在的な期待がある分野と言えるでしょう。

スマートスキャン株式会社 代表取締役社長 濱野斗百礼氏
スマートスキャン株式会社 代表取締役社長 濱野斗百礼氏

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この記事の著者

友清 哲(トモキヨ サトシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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