東芝は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)アグリゲーション向けに、同社が開発した電力市場取引における事業者の取引最適化を支援する「電力市場取引戦略AI」の拡張機能として、時間前市場において最適な入札タイミングと入札量を算出する「時間前市場取引AI」を開発した。
電力市場における卸電力取引は、日本卸電力取引所(JEPX)で運営され、主要市場として、実需給の前日に取引を行う「前日市場(スポット市場)」、当日の発電不調や発電・需要調整の場として、実需給の1時間前までに取引を行う「当日市場(時間前市場)」がある。同社が昨年12月に開発した電力市場取引戦略AIは、発電量予測AI・価格予測AIで再エネの発電量と価格をそれぞれ予測し、その予測に基づき、「スポット市場取引AI」でスポット市場への売り入札量を算出する。
再エネアグリゲーターは、通常、スポット市場で前日時点での予測に基づいて大部分の取引を行い、時間前市場で残りの取引を行うが、スポット市場と時間前市場のそれぞれの売電割合の決定には戦略的な判断が必要であり、昨年のAIはこの前日時点の意思決定を支援する目的で開発された。
次のステップとして、時間前市場取引において、最適な入札のタイミングと入札量の意思決定を支援する仕組みが求められており、同社は、時間前市場取引AIを開発(図1)。同AIを追加することで、再エネアグリゲーターは、従来は難しかった時間前市場取引の意思決定の材料を得ることができる。
通常複数回入札するといわれているゲートクローズまでの間、再エネアグリゲーターが入札を実行する時点での最新の発電量予測と価格予測、過去の市場取引結果に基づいて、最適な入札のタイミングと入札量を計算。入札における「インバランス」と「マーケットリスク」の2種類のリスク(ダブルリスク)を考慮して、取引収益が最大となるように計算するという。
リスクの価格への適切な反映およびダブルリスクの適切なバランスをとることにより、リスクを考慮して取引収益を最大化することが可能に(図2)。同AIはまず、過去の時間前市場の取引実績データをAIが学習することで、リスクの重み付けの判断を支援するリスク感度パラメータを算出する。
加えて、計算時点での最新の各種予測値(再エネ発電量、市場価格、インバランス単価)を取得し、その時点までにスポット市場や時間前市場で入札した量と、最終的な入札量との差分(予測インバランス)を計算。予測インバランスをゲートクローズまでにゼロにするような複数回の入札量を算出。その際、各時刻での価格の予測値や上述したリスク感度パラメータに基づいて累積の取引収益を見積り、膨大な数の組み合わせが存在する入札手順の中から、最大収益の入札手順を発見するとしている。
なお、東芝は現在、東芝エネルギーシステムズおよび東芝ネクストクラフトベルケが参加する再エネアグリゲーションの実証実験を通じて、昨年度開発したスポット市場取引AIと、今回開発した時間前市場取引AIを用いた取引の有効性を検証しているという。