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Zero to IPO 

消去法でのIPOではなく、積極的なM&Aなどの出口戦略へ──上場前後の継続的支援と成長産業の創出とは

『Zero to IPO』出版記念対談 Vol. 2【大櫃直人×朝倉祐介】後編

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上場した途端にスタートアップから離れざるを得ないサポーターたち

大櫃直人氏(以下、敬称略):日本には東証グロース(旧マザーズ)があるため、早い段階でスタートアップが上場できる環境があります。一方で、それが原因で起きている分断もあります。たとえば、VCは強力なアドバイザーとしてスタートアップをサポートするのですが、上場してしまえば株を売ることが可能になるため、インサイダー情報を知ってしまわないように企業と距離を取るようになります。また、主幹事としてサポートに回ってくれていた証券会社も次第に去っていきます。

 上場はあくまでスタートラインのはずなのに、それまで一心同体であった強力なサポーターたちが離れてしまうのです。この状況を打破することが我々の課題です。朝倉さんを含めたシニフィアンの皆さんと意気投合したのも、そこに取り組む姿勢をお持ちだったからです。

 分断、断絶という意味では、ベンチャー・キャピタリストやスタートアップの皆さんと違って、バンカーには転勤があります。前の担当者は問題がなかったが、新しい人とは意思疎通ができない、といった残念な事態も起こりえます。しかし、歯車が1つ外れるだけでエコシステム全体が崩れてしまうのはもったいない。

 そこで、弊行では2021年に「イノベーション企業法人部」を立ち上げ、スタートアップを継続して支援できる組織を作り、メンバーを育成することにしました。イメージとしては、時価総額が5,000億円程度になるまで企業と伴走したいと思っています。これがうまく動いており、上場してからもご相談に乗らせていただくケースが増えてきています。グロースの上場企業を400社ほど、レイターステージのスタートアップ企業を200社強、数十名で伴走させていただいています。

 この変化は銀行にとっては大きなことです。というのも、上場する企業というのは、それぞれの支店が長らくお付き合いしてきた大切なお客さまです。さあ、これからさらに協力関係を強化しようという矢先に、イノベーション企業法人部にお客さまを、ある意味では取られてしまうわけですから、支店としては面白くないはずです。しかし、そのような状況でも、お客さまの立場から物事を考えて、組織全体を変革できたのは大きかったです。今はそれを実感し始めているところです。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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